2018年05月25日

世界栄養報告について(その1)

 国際栄養問題を理解するには、「世界栄養報告」(Global Nutrition Report)を参照するのが最適です。第1回目の世界栄養報告は、2014年11月に、FAOとWHOが主催してローマで行われた「第2回国際栄養会議」で発表されました。以後、毎年公表され、2017年版が昨年末(11月)に公表されています。それに呼応して日本語版も、2014、2015、2016年版が発刊されています。
 最新の2017年版は、過去4年間の取り組みの達成度はどうなのかという総合評価の視点と同時に、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の栄養分野における新たな取り組みの推進について記載されています。2017版は、SDGsを通して栄養を変革する(Transforming nutrition through the SDGs)、というコンセプトを前面に出して展開されています。栄養という枠組み内の個別分野に集中した書きぶりから、SDGs色がかなり濃く反映された分析となっています。
 詳しくは、直接、本体を参照いただくこととして、第1章は、栄養不良(Malnutrition)の負荷に直面する世界の国々の数のうち公表データを有する世界140か国について、円グラフ化して分りやすい説明をしています。STUNTING(発育阻害)の国の数は全体で72カ国、ANAEMIA(貧血)の国の数は125カ国、OVERWEIGHT(肥満)の国の数は95カ国あります。140か国の中で、単独の問題を抱える国は、順に、1、6、10カ国だけとなっています。栄養不良に関連して複数の問題を抱える国が約9割あるということになります。また、人口でみると、世界全体では3人に1人が栄養不良だということです。
 逆に言えば、栄養不良の問題を改善することは、子ども、お母さん含めた個々の人々の健康達成だけでなく、企業の労働力の改善による生産性向上、経済の活性化など、それらに関わる全ての関係者(ステークホルダー)に総合的に良い影響がもたらされます。栄養改善の潜在性を最大限活用し成功を得るためには、全てのステークホルダーの協調行動と整合性が必要と思います。
 しかし、これらが一定期間に達成できないのはさまざまな理由があります。必要データの欠落や情報・制度の不備、予算の不足、担当者の不足などが挙げられます。また、開発途上国問題、気候変動等の地球規模課題や難民問題等一朝一夕に解決困難な問題もあります。いずれも関係者の協調行動により解決は不可能ではないと考えます。これらは、各年の報告書で詳しく分析していきたいと思います。
 また、今回の報告書は、現状の対応とその進捗度合いはどうなのか、そして、当該国、ドナー、国連機関、企業、市民社会の対応状況と今後の方向性のあり方を厳格に問いかけています。特に、企業、制度関連の解説文書に関しては、これまで食品産業界に身をおいていた者として、「目から鱗」でした。報告書を読んでいて、企業はそれを実行しないのか、という焦燥感、無力感を感じました。企業努力で無理であれば政府などが代わってサポートすれば何とかならないか、とも考えたりもしました。
 世界の動きを眺めると、2013年のロンドンで「Nutrition 4 Growth」と呼ばれる栄養に関するサミット、その後の、リオ、ミラノにおける栄養サミットがあり、2020年には日本開催が予定されています。それまでの国際機関に加え、新たなグローバルレベルの援軍が大いに力になると思います。
 我が国は、戦後、各種の健康問題を克服し、世界長寿国になりました。その実績と知見・経験を、2020年の栄養サミットでは世界に人々に向けて発信し、世界の栄養改善に向けた協働行動が今こそ不可欠であることを是非とも呼び掛けていただきたいと思います。我々市民社会も、企業、業界、栄養等の学界、医療含めた全ての関係者と、互いに手に手を取って取り組んで行ける環境が整備できるよう模索しています。現在、当事務所では、2017年版世界栄養報告の日本語訳を整備しているところです。詳しい情報を一刻も早く提供できればと思います。
                                       MK

posted by resultsjp at 15:52| Comment(4) | 情報