2021年12月31日

「Japan Nutrition(英語版)」をご紹介

日本栄養士会の中村丁次会長が書かれた「Japan Nutrition」の英語版がこのほど発行されたため、栄養のアドボカシーに携わる関係機関の方にご紹介をさせていただきました。

WHOの事務局長補でUN Nutrition議長の山本尚子先生をはじめとする国際機関、ケニア保健省の栄養担当トップのヴェロニカ・キロゴ博士、学術界、そして米国リザルツのジョアン・カーター氏などの市民社会など、国内外の計72のパートナーの方にお送りしました。

この本は、日本の栄養改善や二重負荷の解消に向けた政策的な取り組みが非常に詳しくまとめられています。ケニア保健省の方は早速、読んでくださり、「日本の栄養改善の歴史と成功のヒントが網羅されている。こうした日本の文献の英語版はなかなかないから非常に貴重だ」と太鼓判を押してらっしゃいました。


以下のリンクからPDFがダウンロードできます。

https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-16-6316-1


尚、中村先生の取り組みは栄養サミット冒頭の岸田総理大臣のスピーチにも取り上げられましたので、そちらのリンクも合わせてご紹介させていただきます。

東京栄養サミット2021 岸田総理大臣のスピーチ(映像・スピーチ全文あり)

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2021/1207eiyou.html


本年は大変お世話になりました。お体に気を付けて、どうぞ良いお年をお迎えください。

(ぴんく)

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2021年12月28日

マルパス世銀総裁 日本経済新聞インタビュー


日本経済新聞より、デービッド・マルパス世界銀行総裁へのインタビューが行われましたので紹介いたします。

2021年を振り返り、マルパス氏は、世界全体の成長率は約5%に達したと見られるものの、経済回復には国によってかなり差が残っていることに言及しました。例えば、各国の一人当たり所得の伸びは先進国で5%である一方、低所得国は0.5%にととどまっていることや、先行きのリスクとして、インフレや新型コロナを挙げつつ、アフリカ諸国などの貧困国におけるワクチン接種の遅れがコロナ禍を長引かせ、オミクロン株のように世界経済全体への大きな重荷となることを指摘しました。

また、コロナ禍で膨らんだ債務に関して、低所得国の対外責務は2020年は前年比12%増の8600億ドルに達し、債務返済の重さに加え、投資家による投資忌避をもたらしかねないとしました。さらに、途上国の債務について、世界銀行のレポートに言及しつつ、公表された金額と比べ、実際の債務が最大GDPの30%も多い場合があること、また、中国による途上国への貸し付け契約には秘密保持条項が含まれていることが多く、債務の全体像を不透明にするばかりか、債務再編を行う場合に支障を来す例のあることも指摘しました。

最後に、マルパス総裁は、世界銀行による足元の取り組みとして、60か国以上において、ワクチンの取得や配送のための支援を行っていることや、援助資金の35%を気候変動に振り向けるなど、気候変動対策にも積極的に取り組んでいることにも言及しました。


デービッド・マルパス世界銀行総裁へのインタビュー記事全文はこちら(Nikkei Asia 英文):



(杉)
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2021年12月27日

国際デジタル課税ルール改革で1兆円弱の税収>一部を国際連帯税へ!

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   G・ズックマン氏

コロナ・オムロン株があっという間に欧米で吹き荒れ、グローバリゼーションという現実からして、もはや自国だけ安全な国はどこにもありません。途上国・貧困国等のコロナ対策が急がれていますが、圧倒的に資金が不足しています。今般の新たな国際デジタル課税による税収の一部をグローバル公共財として使用すべきです。

●まったく新しい税収、約9000億円が2023年より国庫に入ります

ご承知のように、国際的な法人税改革であるデジタル課税について、本年10月国際ルールが合意されました。合意内容は、(1)巨大IT企業など消費国での税金逃れを防ぐためのルール、(2)最低法人税率(15%)、の二本柱。

この二つの改革により、国際社会は、(1)で250億ドル(約2.7兆円)、(2)で1500億ドル(約16.5兆円)の税収を得ることができます(OECD調査)。各国別では、カリフォルニア大学バークレー校のズックマン准教授らが(2)について調査されています【注1】。

日本の場合は、15%最低税率で59億ユーロ(約7380億円)の税収増となります。この最低税率からの税収と(1)での税収を加えると、年間9000億円前後の税収増になるのではないかと思われます。 

今後のプロセスですが、(1)については2022年中に多国間条約を締結し、2023年から制度実施、(2)については各国が国内法を改正し、2023年から実施、という目標になっています。つまり、早ければ2023年からまったく新しく約9000億円の税収が国庫に入ることになります。

●新しい税収であるデジタル課税の一部を国際連帯税または連帯課徴金として徴収を

そこで提案です。この9000億円はグローバルに事業を展開し利益を上げている多国籍(グローバル)企業が法人税として納税するものですが、その一部を国際連帯税として規定して徴収すべきである、というものです。例えば、上記(1)+(2)のうちの日本分税収に5%を連帯税として徴収するとすれば450億円の税収となり、国際観光旅客税並みとなります(2019年度の同税の税収は444億円)。

ただし、法人税として徴収された税金の一部を国際連帯税として規定するというのは税法上成り立ちうるのかどうか分かりません。このこともあり「税(tax)」という名称はやめて、「課徴金(levy)」として規定し直すということも考えられます。というのは、多国籍企業はその名の通りグローバリゼーションの下に経済活動をしており、今般のコロナ等の感染症パンデミックや気候変動、貧困・飢餓など地球規模課題が厳しくなればなるほど活動基盤そのものが失われてしまうことになります。つまり、この基盤を維持し保護するための課徴金(グローバル公共財)として払うということです。従って、徴収された法人税の一部を「(仮称)グローバル連帯課徴金(Global Solidarity Levy)」と位置づけ【注2】、そこからの税収を地球規模課題に拠出するというものです。

●欧州でのデジタル課税の使途

欧州委員会は今月22日、7500億ユーロに上るコロナ復興基金の資金調達(債券の償還資金)について3つの財源案を発表しました【注3】。そのうちのひとつが、多国籍企業への課税ということで、今般のデジタル課税による(各国に入る予定の)税収の15%を欧州連合(EU)に拠出すべき、というものです。

もしEUがデジタル課税による税収の一部をGlobal Solidarity Levyとして徴収するというようになれば、グローバル公共財のための資金調達について各国が個別に拠出するのではなく、「((1)+(2))×5%(例)=9800億ドル(約1兆円)」というように自動的に国際社会に拠出されるという気運が高まり、資金調達システムとして確立する可能性も出てくるのですが。

ところで、この欧州委提案は概ね欧州議会で賛同を得ているようですが、ドイツ社会民主党などのS&D・社会民主進歩同盟グループは「復興計画の財源案はまだ不十分。金融取引税(FTT)と企業部門に関連する独自財源も必要。大企業と金融投資家はEU経済の回復に貢献しなければならない!」とのコメントを出しました。これに対し、担当のハーン欧州委員は「FTTが含まれる可能性のある第2次提案に取り組んでいる最中」と明言しました【注4】。

●多国籍企業はタックスヘイブン(租税回避地)で100兆円の利益を上げている

ズックマン准教授によると、多国籍企業はタックスヘイブンで利益を8000億ユーロ(約100兆円)も上げており、これは何と!多国籍企業の総利益の40%にも及ぶと報告しています。そういう中で、最低法人税率が15%というのはあまりにも低すぎます。ちなみに日本の法人税は23.4%ですが、これに地方法人税、法人住民税、法人事業税(実効法人税)と27.94%になります。とすると15%以下であるアイルランドやその他のタックスヘイブンに本社等を置いておくインセンティブはまだまだありそうです。

とはいえ、ズックマン准教授は「多くの人々が21世紀には法人税率の引き下げ競争は不可避だと考えてきた。だが、今回の合意がまだ不十分なものであるとしても、われわれはこの合意により多くの具体的な選択肢を得た」と述べています。つまり、国際的合意があれば、最低税率を段階的に上げていくことができるからでしょう。強い国際的世論と政治的なリーダーシップの登場が望まれます。

【注1(日経新聞)最低税率、格差是正に寄与 法人課税、国際合意の意義

【注2「連帯のグローバル化:金融課税のための論拠 『国際的な金融取引と開発に関するタスクフォース』専門家委員会報告書2010

【注3】(日経新聞)欧州委、新型コロナ復興基金の「財源」に炭素税など3

【注4】MEPs welcome European Commission proposals on establishing EU’s own resources

最低税率.JPG



ワクチン格差.JPG

・ズックマン氏の写真は、クーリエ・ジャポンより

・最低税率設定による税収増効果は、12月21日付日経新聞より

・世界のワクチン格差は、12月26日付朝日新聞より

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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どーらからの年末のご挨拶

師走の候、今年も残すところあと僅かとなりました。

本年は日本リザルツの活動に多大なるご協力をいただきまして、本当に有難うございました。

振り返りますと、2021年は東京オリンピック・パラリンピックはもちろんのこと、国際保健に関する大きな国際会議が日本で開催された年でもありました。6月には日本はAMCサミットを主催し、COVAXファシリティーに新たに8億ドルの拠出を表明。これまでに総額10億ドルの資金拠出を実施し、ワクチン分配における国際協調を世界各国に先んじて進めてきました。12月に開催された東京栄養サミットにおいては、日本は3000億円(28億ドル超)もの拠出を宣言。全体で300以上のコミットメントが提出され、およそ270億ドル(3618億円)栄養関連の資金拠出がなされました。また、世界銀行グループの国際開発協会 (IDA) の第20次増資最終会合では、日本は過去最大の3,767億円(34億ドル相当) を拠出することを表明しました。コロナ禍という難しい局面の中、東京オリンピック・パラリンピックと一連の国際会議を無事に終えることができた上、日本のリーダーシップを世界に示すことができたのは、他でもない皆様のお力添えのお陰です。心より感謝申し上げます。


浅野前理事長が国際協力は「お互いに愛するということから始まる」とよく言っていましたが、コロナ禍で先が見通しづらい状況だからこそ、思いやりの気持ちを持ち、皆が手と手を取り合って問題を解決していく必要があると感じております。1人でも多くの方が健やかに笑顔で、尊厳を持って暮らせる世界を目指せるよう、2022年も地道に取り組みを続けて参りますので、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。


新年は14()が仕事始めとなります。時節側、どうかお体を大切に、良いお年をお迎え下さいますことを心よりお祈り申し上げます。


日本リザルツ 理事長・代表 白須紀子

スタッフ一同

マサルと白須代表.jpg

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2021年12月26日

デズモンド・ツツ元大主教が死去

南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策に反対し、非暴力で撤廃運動を続け、ノーベル平和賞を受賞されたデズモンド・ツツ元大主教が26日、お亡くなりになりました。90歳でした。

ツツ元大主教は代表の白須ともご縁があり、2007年にツツ元大主教をAERAの表紙にするようアドボカシーしたのは他でもない白須代表と当時のスタッフだったそうです。


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当時のAERA表紙


ご冥福を心よりお祈り申し上げます。


報道はこちらを参照:

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211226/k10013405001000.html


(ぽにょ)

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