財務省は2022年5月27日、日本の対外純資産が2021年末時点で411兆1841億円だったと発表しました。2年ぶりの増加で過去最大となり、20年末時点に比べて円相場が円安に振れ、企業や政府などが海外に持つ外貨建て資産の評価額が円換算で増え、日本は31年連続で世界最大の純債権国で、2位のドイツを100兆円近く引き離しています。
海外資産の残高は前年比9.2%増の1249兆8789億円となり、国内企業によるM&A(合併・買収)などを通じた直接投資が増えています。対外純資産が過去最高を更新したのは為替要因が大きく、21年末時点の円相場は1ドル=115円12銭と20年末に比べて1割超の円安・ドル高で、円安が外貨建て資産の評価額を81.8兆円も押し上げています。
海外への投資自体も増えており、株式や債券などへの証券投資は578兆3468億円になっています。日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)などを通じた直接投資は228兆7628億円。証券投資、直接投資のいずれも過去最高でした。
海外から日本に向かう投資を反映する「対外負債」は20年末から6.2%増の838兆6948億円となり、3年連続の増加ですが、日本から海外への投資である「対外資産」の残高が上回る状況が続いています。
対外資産から対外負債を差し引いた対外純資産のうち、直接投資の比率は証券投資を上回って推移しており、411兆円の純資産のうち、直接投資は188兆2584億円と4割強を占めます。
直接投資は流動性の高い株式などと異なり、すぐに売却しにくく、直接投資の増加が、外国為替市場で急激な円高が起こりにくい一因ともなっています。
国・地域別でみると、21年末時点で日本に次いで対外純資産が多いのはドイツで315兆7207億円。香港が242兆7482億円、中国が226兆5134億円で続きます。2月のウクライナ侵攻後、西側諸国から資産凍結の制裁を受けるロシアは55兆2128億円。世界最大の純債務国は米国で、対外純債務残高は2067兆3330億円。
※対外純資産とは、日本の政府や企業、個人が外国に保有する資産から負債を差し引いたもの。資産は政府の外貨準備高、銀行の対外融資、企業の対外投資といった額を合計。負債としては海外勢の対日投資などがあります。純資産が大きくなると、国として海外で稼ぐ力を示す代表的な指標である経常収支の改善につながります。
(一)