2023年03月08日

国際学校給食デーを前に学校給食について考える:ADBの取り組みより

315日は「国際学校給食デー」です。現在、味の素から栄養の専門家としてADBに出向された小笠原和子様の寄稿がADBの公式ブログに掲載されていました。昨年には同僚の栄養コンサルタントの皆様と日本リザルツのオフィスにお越し下さり、東南アジアの栄養・給食プログラムについてご紹介してくださったばかりです。

http://resultsjp.sblo.jp/article/189976482.html


英語のブログ全文はこちらからお読みいただけます。

https://blogs.adb.org/blog/we-need-expand-school-meal-programs-are-feeding-asia-s-future


以下、邦訳をご紹介します。

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アジアの未来を支える学校給食の拡充を


小笠原和子、ミラン・トーマス著


「国際学校給食デー」は、世界で38800万人の子どもたちに恩恵を与えている世界最大の社会的セーフティーネットを支援する機会です。


2020年にCOVID-19のまん延を抑えるため、世界中の学校が閉鎖され、子どもたちの教育へのアクセスに困難が生じました。実際、多くの国で教育への取り組みが大きく後退し、低所得世帯の生徒にとっては遠隔授業への参加すらままならない状況が起こりました。


そして、何億人もの子どもたちが、毎日の学校生活で食べていた食事の機会を奪われました。


学校給食は20世紀にヨーロッパで始まり、近年は開発途上国でも広がっています。現在、学校給食は世界最大の社会的セーフティネットであり、世界で38800万人の子どもたちが恩恵を受けています。


世界食糧計画(WFP)によると、データがある163か国のうち161か国が学校給食プログラムを実施しています。世界では48%の子どもたちが学校給食の対象となっていますが、国ごとのカバー率は大きく異なるのが現状です。2020年現在、低所得国では20%、低中所得国では45%、高中所得国では58%、高所得国では78%となっています。


貧困、発育阻害、貧血の割合が高い国では、給食のカバー率が最も低くなります。食事の栄養バランスの面でも改善の余地があります。ただ、パンデミック前の10年間は、最も必要とされる場所で学校給食プログラムの拡大・改善が進んでいました。


学校給食プログラムは、子どもたちに栄養価の高い食事を提供し、健康で生産的な生活を送るための基盤となっています。学校給食プログラムの形態は、政府によって異なります。インドや韓国のように、共通の無料給食を提供する国もあれば、マレーシアのように低所得の生徒を対象にした給食を提供する国もあります。

費用ですが、学校給食を完全に無償で提供するところもあれば、低価格で給食を提供するところもあります。数も異なります。1日に何度も食事を提供するところもあれば、昼食だけを提供するところもあります。各国の事情が反映されていることが多いです。


例えば、ブータンでは、多くの学校が13食を提供しています。これは、寄宿舎制度が普及しているためです。人口の少ないこの国では、多くの学生が最寄りの学校から遠く離れた場所に住んでおり、毎日通学するのが難しいため、学校内の寮で生活しています。


すべてのケースに共通して言いたいことは、栄養失調を防ぐために十分な食事の多様性を提供する=バランスのとれた食事が必要であるということです。栄養価の高さに関しては、カバー率と同様、豊かな国(高所得国)のほうが優れている傾向にあります。


学校給食プログラムは、栄養教育を補完すると特に効果的です。米国や他の先進国における肥満のまん延が示すように、経済発展が進んだからといって、栄養不足が解消されるわけではありません。


投入した公的資金が確実に子どもの食事として口の中に入り、身となることは健全な投資です。これは、直接的な健康上の利益だけでなく、教育の成果や地域の農業を強化するという観点からもそう言えます。


日本では、学校給食と栄養や食料生産に関する教育プログラムが組み合わされています。この組み合わせは、健康や栄養の知識が豊富な国民を作るのに効果的です。日本では1954年に「学校給食法」が制定され、学校給食が子どもたちの認知・身体発達の柱となることが定められました。現在、小中学生の96%が給食を食べており、栄養士による栄養教育も行われています。日本で栄養不良や肥満が少ないのはそのためと言われています。


また、学校給食は社会的なセーフティネットにもなります。食料安全保障は気候変動や紛争など国家的な緊急事態に常に脆弱であるが、学校給食は少なくとも家庭の事情から生徒を守ることができます。不作や不運な収入減があっても、子どもが空腹になることはありません。


COVID-19の学校閉鎖は、学校給食プログラムの重要性を再認し、学校が全ての子どもに均等に様々な機会を提供していることを実証しました。学校閉鎖が学習面で、特に低所得者層の生徒に著しい影響を与えたのと同様に、子どもたちの栄養摂取にも逆行する影響を与えました。


また、給食プログラムへの投資は健康への直接的な利益だけでなく、教育の成果や地域の農業を強化する上でも、健全な投資であるというエビデンスが増えつつあります。


WFPが行ったエビデンス分析によると、学校給食プログラムが幅広い国々で、生徒の健康、就学、出席をサポートすることが証明されていることがわかりました。具体的にはユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するための要素として栄養が重要であること、それに、学校給食が提供されると、教育と健康が相互に強化されることを示しています。


学校給食の支給率が80%未満の国の多くはサブサハラ・アフリカですが、南アジア、中央アジア、東南アジアにも少数ながら存在します。


給食を必要とする子どもたちに確実に届けるために、資源が限られている政府は、民間企業やNGOと提携して給食を提供したり、農業技術や農村部のインフラに投資して食料生産を促進したり、エビデンスに基づいたアプローチで費用対効果の高い学校給食を設計必要があります。SMP PLUSのようなイノベーションは、人工知能を使って、予算制約がある中、栄養価を最大化する学校メニューを作成することに貢献します。


世界がCOVID-19から脱却し、各国政府が社会経済の観点から復興計画を立てる中、学校給食プログラムの対象範囲と栄養政策を拡大することは、学校が豊かで公平な社会の出発点としての約束を果たすために不可欠だと考えます。

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栄養教育については日本リザルツも予てよりアドボカシーをしています。今後もADBの取り組みから目が離せませんね。

(ぴんく)

posted by resultsjp at 15:28| Comment(1) | 情報