2023年06月30日

ワークショップ:「ウクライナ復興そして未来を考える」

上智大学と慶応大学、東北大学の3大学によるワークショップ「ウクライナ復興そして未来を考える」が開催されました。


冒頭、上智大学の曄道(てるみち)佳明学長は長期化するウクライナ侵攻に哀悼の意を寄せるとともに「一人一人の尊厳を守ることが不可欠である」ことを強調していました。

ちなみに曄道学長は、逢沢一郎衆議院議員の大学時代の後輩にあたるようです。

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現場にいる霞が関の魔法使いどーらからもお写真が届きました。逢沢先生もいらっしゃいます。


シンポジウムは植木安弘教授 (上智大学国際協力人材育成センター所長、元国連広報官)の基調講演から始まりました。

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続いて、外務省、経団連、JICA、国際開発金融機関、NGOなどから、それぞれの意見を述べました。

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中村仁威氏(外務省 欧州局参事官)

日本が外務省を中心にこれまでウクライナ支援に注力してきたことを紹介。その上で、問題解決のために欧米だけでなくグローバルサウスとの連携なども重要であると指摘されていました。また、復興についても議論がはじまっており、木原誠二内閣官房副長官を議長として、ウクライナ経済復興推進準備会議が開かれていることを紹介していました。

外務省の関連プレスリリースはこちらを参照:

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_009733.html

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森田清隆氏(日本経済団体連合会 国際経済本部統括主幹)

民間セクターはG7に合わせてB7を開催。経済界としてロシアへの制裁を続けるとともにウクライナの支援を続けることが合意されたことを発表しました。また、先日行われたウクライナ復興会議におけるウクライナのゼレンスキ―大統領のスピーチを引用し、経団連としてもウクライナ支援の特別の部会を設置したことを紹介していました。

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小早川徹氏(JICA 中東・欧州部ウクライナ支援室長)

外務省のODA支援について、更に詳しく資料を用いて紹介をくださいました。その上でJICAとしては、ウクライナの国家基盤を支える協力や地域安定化のため周辺国への支援を強化していくとされていました。

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米山泰揚氏(世界銀行駐日特別代表)

世界銀行がそもそも戦後復興を目的に設立された組織であることを紹介。その上で、ウクライナ復興に関して、公的資金だけでは到底足りるものではないため、民間セクターを支援していくことが大切であるということを指摘。世界銀行としてもMIGAなどで後押しをしているとしていました。

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また、復興支援をバラバラと行うのではなく、一本化した支援を行うことが重要であると指摘。そのために世銀が窓口となっているそうで、日本もドナーとして貢献している上、「国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」が可決されるなどの大きな動きがあったことを紹介していました。


法案に関するブログはこちらを参照:

http://resultsjp.sblo.jp/article/190175734.html


その上で、ウクライナの影響が債務、物価上昇、コロナなどの問題にも拍車をかけていることを紹介。最後に米山氏はウクライナ政府に負担をかけない形で支援をするとともに、ウクライナも大事だけど、ウクライナ以外にも世界には問題がどんどん起きているので、日本がイニシアチブを取って議論を進めていってほしいと提言されていました。

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大矢伸氏(欧州復興開発銀行 東京事務所所長)


インフラ整備を中心にEBRDがウクライナ支援を続けているとしつつ、資金に限りがあるためEBRDの増資に向けて、議論がはじまっていることを紹介していました。また、安全やセキュリティの観点に触れ、中長期的には安全保障的な対策をしないと民間企業の投資が進まないことを指摘されていました。また、こうした取り組みを通じて、産官学民がいい意味で連携をしていくことが重要であることを強調されていました。

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樋口博昭氏(NPOジャパン・プラットフォーム事業推進部長 事業評価部長、事業管理部長兼任)

JPFがこれまで行ってきたウクライナ支援を紹介するとともに、今後は保健や教育などの長期的な支援が増えていくと指摘。また、地理的条件から日本はアジア、中東への支援が多く、ウクライナへの人道支援の経験が浅い上、治安が悪いため現地のでの活動が制限されているなどの課題があるとしていました。その上で、NGOも国際機関やドナー、民間セクターと連携していくことで、より効果的な支援を進めていくことができるのではないかと示唆していました。


これに呼応する形で、アカデミアから日本の果たすべき役割について提言がありました。

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田中浩一郎教授(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)

故・緒方貞子さんの言葉を引用し、「人道支援から開発支援へのスムーズな移行」が重要であると指摘。大学としては人材輩出に特にコミットしていきたいという意向を示しました。また、それに付随して、汚職やガバナンスなどの問題を改善する必要があることも強調されていました。

また、「オールジャパン」という言葉について、今、足並みが乱れているから、この言葉が出ているのではないか?と皆さんに問われる場面もありました。

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植木俊哉教授(東北大学理事・副学長、東北大学国際法政策センター長、国際法学会代表理事)

東日本大震災からの復興に関する大学の取り組みを紹介。分野を超えた学際的なアプローチが災害復興においては非常に重要だったことを指摘し、次回のワークショップはこうした知見を踏まえたセミナーを行うことを紹介しました。


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ウクライナは結核高まん延国で、特に薬剤耐性結核が深刻な問題となっています。質疑応答では、米山世界銀行駐日特別代表が今後の結核対策について心配されていました。
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また、逢沢一郎先生もご挨拶をされ、今回多くの登壇者から意見のあった財源の確保については、国際連帯税を導入するのはどうかという力強いご提案をされていました。

今回のワークショップを通じて、戦争が終わる前から復興に関しても議論をはじめることが重要であることを感じました。また、皆さん「日本の強みを活かして」という言葉をよく使われているのが印象的でした。皆さんの言う強みは技術やノウハウという意味合いでしたが、何より、日本には、第二次世界大戦後、平和国家を貫き続けている強い理念があります。こうしたマインドも含めて、日本が日本らしい協力ができるよう、私たちには何ができるか考えていきたいと思います。


次回のワークショップは9月8日(金)に東北大学主催で開かれるそうです。

(ぽ)

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2023年06月29日

肥大化する予備費、審議を早めることはできるか

6月29日付の朝日新聞に、「予備費膨張 検証後回し」という記事が記載されていました。


予備費とは、緊急時に予算が不足する場合に備え、例外的に使い道を決めずに計上する予算のことを指します。使い道は政府が閣議で決定できるのですが、事後に国会で承諾を受ける必要があると憲法に定められています。ここ20年、国会による審議が支出年度の翌々年へと先送りされているという状態が続いているそうです。


記事の中で大阪大学の片桐直人教授は、財政運営の透明性確保のため事後承諾は可能な限り迅速に行うべきであると指摘。議決も、予算と同様に丁寧に進めることが重要で、現状、予備費使用の承諾が後回しにされる事に対して、批判的な意見を述べています。補正予算と同規模の額にも関わらず、審議時間自体も短いそうで、国会職員からも疑問の声が上がっているそうです。


間違いなく、予算の使い道は十分な議論と適切な手続きのもとで確定されるべきです。この問題が続くと、予算の使い道が民主的に決定されないことになるのではと危惧しています。


私たち日本リザルツは感染症、ワクチン、栄養、公衆衛生、UHCなどの解決へ予算をつけてもらうよう、時に、政策を立案している国や議員の先生方と直談判することがあります。丁寧なプロセスを踏んで予算と向き合っていく必要があるのだと思います。


個人的な意見を述べると、予備費の問題は国会審議の課題の氷山の一角ではないかと思います。日本国民の税金の大事な使い道を決定しているのですから、国会全体の課題にも真剣に取り組んでいってもらいたいです。


Watagashi

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ODAに「民」の力を交えるために

6月29日付の日本経済新聞に、「ODAは民の力交え質高めよ」という社説が記載されています。

6月9日に閣議決定され、8年ぶりの改定が決まった「開発協力大綱」に対して、途上国の発展のみならず日本企業の成長にもつなげてほしいと意見を寄せています。


新・開発協力大綱に関するブログはこちらを参照:

http://resultsjp.sblo.jp/article/190396083.html


日本では、途上国進出を目指すスタートアップに対し、ODAを通じて資金を提供し、成長の種を蒔くといった実績があります。これは日本企業の発展にもつながると考えられます。また、「シードマネー」という初期段階の費用を拠出するファンドの創設も行われています。


従来の相手国からの要請を待つ支援ではなく、支援内容をこちらから提案する「オファー型協力」も始まり、さらに積極的なODAの活用が期待されています。


本記事の題名にある「民」の字は、日本の「民」間企業の意味が込められているのだと解釈できますが、何より大切なのは、現地に住んでいる「民」衆の声なのだと思います。日本発のODAであっても、現地住民と協力し合い双方に効果的なものになるべきです。


日本リザルツは常に草の根の目線を意識し、多くの政策を立案する方に一般市民の声を届ける活動をしてまいりました。

今回改定されたODAの使い道が、本当に現地の「民」のためになることを期待しています。


Watagashi

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AI時代のリスキリング:ロダンしなさいの重要性とは?

26日付の公明新聞に「AI時代のリスキリング」と題した記事が掲載されていました。

記事は2部構成です。DX化によって国内の中小企業でもITリテラシーが重要になっていることを指摘。専門職だけでなく、全社員を対象にしたDXIT化の研修を行い、組織内全体で取り組める環境をつくることで人手不足の解消とマネジメントの効率化につなげる必要があると指摘。日本政府でもリスキリングでITリテラシーを高める動きが始まっていることなどを紹介していました。

また、経済産業研究所の岩本晃一氏のインタビューでは、会社でパソコンが11台支給されるようになった時を例に挙げ、「将来的にはAIを使って仕事をするのが当たり前の時代」がくると分析しています。

また、一部でAIが人間の仕事を奪うのではないかという懸念があることについては、AIができる仕事をAIに任せるので、人間はAIにできない仕事に専念できるようになるとメリットを強調していました。

日本企業ではAIDX化について、遅れが目立つという課題については、日本企業は内向きの社内政治や慣習に囚われ、生産性の向上に目を向けてこなかったと指摘。リスキリングが行われる際に、マネジメントも同時に改善されることを期待したいとしています。

最後に「人手不足による問題を技術革新で代替することができれば、日本が再び力強く成長していくことも可能」とし、日本は過去、欧米や中国の文化をうまく活用し、独自の新しい文化を編み出したことを紹介。DXAIにおいてもテクノロジーを上手く取り入れながら、新しいイノベーションを起こしていく必要があるのでは?と提唱していました。


昔、日本車の開発に関する仕事に携わっていた際に、ある企業では、当時、メジャーな車を一体、全部解体して分析。そこから、日本オリジナルのコンパクトで燃費のよい車のアイデアが浮かび、日本の大衆車となったという話を耳にしました。

変化の激しい時代だからこそ、新しい技術や知識を吸収することもが前提にあり、その上で、人と違う何かを生み出す発想力を養うことも差がつくポイントなのかと思いました。

尚、岩本氏の奥様は白須理事長の長年のご友人だそうです。また、白須理事長はよく「ロダンしなさい」とインターンやスタッフの皆さんに仰っていますが、ただリスキリングするだけでなく、そこからロダンして、新たなアイデアを生み出せるよう、私も頭を柔軟にしていきたいと思います。

 (ぽ)

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北朝鮮と核使用:ジャック・アタリ氏のインタビューより

29日付の日本経済新聞に元欧州復興開発銀行総裁のジャック・アタリ氏が北朝鮮情勢についてインタビューを寄せられていました。アタリ氏は1981年にミッテラン大統領の顧問を務め、1991年〜93年にかけて欧州復興開発銀行の最初の総裁となりました。長年に渡って、仏政権の中枢で重要な役割を担い、サルコジ、オランド、そしてマクロン現大統領にも大きな影響を与えています。また、国際保健や栄養問題にも造詣が深く、ご自身で「Action Contre La Faim」というNGOを立ち上げられた経験もあります。


アタリ氏は北朝鮮の軍備はすでにかなりの水準にあり、40発以上の核弾頭を保有しているとみられることを指摘。すでに金正恩総書記が米国まで届くような弾道ミサイルの開発を命じていることも鑑みて、北朝鮮の核開発について「あらゆる事態を想定すべき」と警鐘を鳴らしています。

また、1950年代の朝鮮戦争以降、ソ連と中国がこの問題を西側諸国の問題と傍観してきたことを指摘。情勢が見過ごされてきたことを指摘。それは、北朝鮮に対する、インド、パキスタン、イランなどの動きにも影響を与えていると示唆しています。

さらにアタリ氏は北朝鮮の核開発を見過ごしたままにしておくと、韓国が核保有することを国際社会が拒否できなくなるとし、インドシナ半島や太平洋地域、そして中東などまで核拡散のドミノ現象が生じると訴えています。

具体的な問題解決策として、アタリ氏はまず中国と米国が協調をし、抑止体制を整える必要があるとし、そのためにも核使用の脅威が残るウクライナ侵攻を終息させる必要があると提唱しています。


国際情勢については、ウクライナ侵攻が混とんとしている上、直近では中台問題やグローバルサウスなどの話のみに終始しがちです。ただ、1950年代以降、70年もの間、北朝鮮情勢をめぐる問題が残っていることを私たちも忘れないようにしたいですね。

(ぽ)

posted by resultsjp at 16:40| Comment(1) | 情報