上智大学と慶応大学、東北大学の3大学によるワークショップ「ウクライナ復興そして未来を考える」が開催されました。
冒頭、上智大学の曄道(てるみち)佳明学長は長期化するウクライナ侵攻に哀悼の意を寄せるとともに「一人一人の尊厳を守ることが不可欠である」ことを強調していました。
ちなみに曄道学長は、逢沢一郎衆議院議員の大学時代の後輩にあたるようです。
現場にいる霞が関の魔法使いどーらからもお写真が届きました。逢沢先生もいらっしゃいます。
シンポジウムは植木安弘教授 (上智大学国際協力人材育成センター所長、元国連広報官)の基調講演から始まりました。
続いて、外務省、経団連、JICA、国際開発金融機関、NGOなどから、それぞれの意見を述べました。
中村仁威氏(外務省 欧州局参事官)
日本が外務省を中心にこれまでウクライナ支援に注力してきたことを紹介。その上で、問題解決のために欧米だけでなくグローバルサウスとの連携なども重要であると指摘されていました。また、復興についても議論がはじまっており、木原誠二内閣官房副長官を議長として、ウクライナ経済復興推進準備会議が開かれていることを紹介していました。
外務省の関連プレスリリースはこちらを参照:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_009733.html
森田清隆氏(日本経済団体連合会 国際経済本部統括主幹)
民間セクターはG7に合わせてB7を開催。経済界としてロシアへの制裁を続けるとともにウクライナの支援を続けることが合意されたことを発表しました。また、先日行われたウクライナ復興会議におけるウクライナのゼレンスキ―大統領のスピーチを引用し、経団連としてもウクライナ支援の特別の部会を設置したことを紹介していました。
小早川徹氏(JICA 中東・欧州部ウクライナ支援室長)
外務省のODA支援について、更に詳しく資料を用いて紹介をくださいました。その上でJICAとしては、ウクライナの国家基盤を支える協力や地域安定化のため周辺国への支援を強化していくとされていました。
米山泰揚氏(世界銀行駐日特別代表)
世界銀行がそもそも戦後復興を目的に設立された組織であることを紹介。その上で、ウクライナ復興に関して、公的資金だけでは到底足りるものではないため、民間セクターを支援していくことが大切であるということを指摘。世界銀行としてもMIGAなどで後押しをしているとしていました。
また、復興支援をバラバラと行うのではなく、一本化した支援を行うことが重要であると指摘。そのために世銀が窓口となっているそうで、日本もドナーとして貢献している上、「国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」が可決されるなどの大きな動きがあったことを紹介していました。
法案に関するブログはこちらを参照:
http://resultsjp.sblo.jp/article/190175734.html
その上で、ウクライナの影響が債務、物価上昇、コロナなどの問題にも拍車をかけていることを紹介。最後に米山氏はウクライナ政府に負担をかけない形で支援をするとともに、ウクライナも大事だけど、ウクライナ以外にも世界には問題がどんどん起きているので、日本がイニシアチブを取って議論を進めていってほしいと提言されていました。
大矢伸氏(欧州復興開発銀行 東京事務所所長)
インフラ整備を中心にEBRDがウクライナ支援を続けているとしつつ、資金に限りがあるためEBRDの増資に向けて、議論がはじまっていることを紹介していました。また、安全やセキュリティの観点に触れ、中長期的には安全保障的な対策をしないと民間企業の投資が進まないことを指摘されていました。また、こうした取り組みを通じて、産官学民がいい意味で連携をしていくことが重要であることを強調されていました。
樋口博昭氏(NPOジャパン・プラットフォーム事業推進部長 事業評価部長、事業管理部長兼任)
JPFがこれまで行ってきたウクライナ支援を紹介するとともに、今後は保健や教育などの長期的な支援が増えていくと指摘。また、地理的条件から日本はアジア、中東への支援が多く、ウクライナへの人道支援の経験が浅い上、治安が悪いため現地のでの活動が制限されているなどの課題があるとしていました。その上で、NGOも国際機関やドナー、民間セクターと連携していくことで、より効果的な支援を進めていくことができるのではないかと示唆していました。
これに呼応する形で、アカデミアから日本の果たすべき役割について提言がありました。
田中浩一郎教授(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
故・緒方貞子さんの言葉を引用し、「人道支援から開発支援へのスムーズな移行」が重要であると指摘。大学としては人材輩出に特にコミットしていきたいという意向を示しました。また、それに付随して、汚職やガバナンスなどの問題を改善する必要があることも強調されていました。
また、「オールジャパン」という言葉について、今、足並みが乱れているから、この言葉が出ているのではないか?と皆さんに問われる場面もありました。
植木俊哉教授(東北大学理事・副学長、東北大学国際法政策センター長、国際法学会代表理事)
東日本大震災からの復興に関する大学の取り組みを紹介。分野を超えた学際的なアプローチが災害復興においては非常に重要だったことを指摘し、次回のワークショップはこうした知見を踏まえたセミナーを行うことを紹介しました。
今回のワークショップを通じて、戦争が終わる前から復興に関しても議論をはじめることが重要であることを感じました。また、皆さん「日本の強みを活かして」という言葉をよく使われているのが印象的でした。皆さんの言う強みは技術やノウハウという意味合いでしたが、何より、日本には、第二次世界大戦後、平和国家を貫き続けている強い理念があります。こうしたマインドも含めて、日本が日本らしい協力ができるよう、私たちには何ができるか考えていきたいと思います。
次回のワークショップは9月8日(金)に東北大学主催で開かれるそうです。
(ぽ)