2024年07月25日

ガザの保健情勢

日本リザルツは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のキャンペーン事務局をしています。25日(木)付の朝日新聞にガザの最新の保健情勢に関する記事が載っていました。

1つ目はUNRWAの清田明宏保健局長のインタビューです。ガザ地区にあるUNRWAの避難所では想定の10倍ほどの人が身を寄せているので、トイレが500人に1人しかないそうです。避難民の中にはタンクを地中に埋めて、簡易トイレを作っている人もいますが、排泄物が砂地に浸み込み、地下水を汚染する危険性があるそうです。また、道端のゴミの山から汚水が流れ、感染症も広がっているそうです。清田先生は、政治判断ひとつで人が助かるのに、その判断がなされないので、命が救えないと声をあげています。

もう1つはWHOの発表で、ガザでポリオがまん延する危険が高まっているそうです。インフラ施設の破壊により、衛生状態が悪化していることが要因で域外に拡散する恐れがあるそうです。ポリオウイルスは主に幼児が感染しますが、非常に感染力が強く、手足にまひが残り、最悪の場合死に至ります。WHO25日からUNICEFとガザに入って実態を解明し、ワクチン集団接種の必要性について検討するとのことです。

閉鎖された環境で情報が限られているため、現地の詳しい状況が気になりますが、紛争が原因で救える命がなくなってしまうことは防ぎたいものです。

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G20財務相等会合、超富裕層への課税、国際租税協力枠組み条約

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G20財務相・中銀総裁会議が25−26日に開催されますが、その共同声明のドラフトをロイター通信が入手したということで、電子版に掲載されています(注1)。様々な課題がある中で、議長国ブラジルがもっとも重視し今回の共同声明に盛り込もうとしていたのが「超富裕層へのグローバルな最低課税」案ですが、どうなりそうでしょうか?

■超富裕層へのグローバルな最低課税案は共同声明に盛り込まれるか?

ロイター記事は次のように述べています。「共同声明案はブラジルが強く主張する富裕層への課税強化について支持表明は盛り込まれず、IMFとブラジルの依頼で行われている収入に関する調査をG20財務相が注目していると記すにとどめた」、と。この富裕層への課税案は次回G20議長国となる南アフリカやアフリカ連合、そしてフランスやスペインなどが賛同しましたが、米国その他が反対したようです。

もっとも共同声明とは別に「国際課税協力に関するリオデジャネイロG20閣僚宣言」を上げるようですが、これは多分に議長国のメンツを立てるためでしょうか? ただ、この閣僚宣言が「国際租税協力に関する枠組み条約」との関連で述べられることになれば、たいへん意義のあるものになると思います。

ちなみに、タックス・ジャステス関係NGOのみならず、国際協力NGO・研究団体、労働組合は、まず枠組み条約を制定し、その中に富裕層への課税を盛り込むべきではないかと提案しています。同時に、多国籍企業への公正な課税、金融取引税なども。要するに、脱税、租税回避、利益移転、そして違法な資金流出を止めていく手立てを準備していくことです。

■OECDの権威の失墜>国連 国際租税協力枠組み条約の動き加速か?

なお、本日(25日)の日経新聞は、『デジタル課税遠い決着、独自税復活に懸念 G20の焦点に』と題し、次のように述べています(注2)。「これまで国際課税の議論は先進国の主導でOECDがけん引してきたが、近年はアフリカ諸国を中心に国連に軸足を移す動きもある。東京財団政策研究所の岡直樹研究員はデジタル課税の膠着が続けば『OECDの権威を失墜させかねない』と警鐘を鳴らす」。

日経新聞ではほとんど報道されていませんが、「国連に軸足を移す動き」とは国際租税枠組み条約づくりに動きのことですが、スケジュールは以下の通りとなります。
 1)7月29日〜8月16日枠組条約の付託事項を起草する特別委員会の第2回目の会合
 2)ここで草案が合意されると、これを9月からの国連総会に報告し、最終決定を図る
 3)その後条約文の交渉が行われる。

◎以下、特別委員会によるドラフト(⇒この分析は29日のセミナーで行います)
・国際連合枠組条約のゼロドラフト(2024年6月7日)
・国際連合枠組条約の規約改訂案(2024年7月18日)

【セミナー「国連国際税務協力枠組条約の設立の可能性を探る」開催】
 ◎日 時:7月29日(月)午後7時〜8時30分
 ◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表/GATJ(Global Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表
      金子文夫・横浜市立大学名誉教授:
 ◎参 加:Zoomによるオンライン配信。gtaxftt@gmail.com から申し込みください。
 ◎参加費:無料
   ※ 詳細は、http://isl-forum.jp/archives/4264 をご覧ください。

(注1) 
G20財務相、共同声明で世界経済「軟着陸」の可能性に言及へ
(注2)
デジタル課税遠い決着、独自税復活に懸念 G20の焦点に

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)
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2024年07月22日

自分ごととして考えよう:ACE岩附由香さんの記事より

19日(金)の朝日新聞夕刊に日本リザルツとお付き合いのあるACEの活動に関する記事が掲載されていました。


ACEはアフリカのガーナでこどもの児童労働をなくすための取り組みを行っています。2023年末からはガーナのカカオ豆を使ったチョコレート豆を販売し、そのうちの500円をガーナのこどもたちに還元する取り組みを行っています。500円はガーナではこども1人分の1か月の給食費の半分にもなるそうです。日本のチョコレートの国別の消費量はドイツやイギリス、アメリカとともに世界有数ですが、現地・ガーナの状況は意外と入ってきていません。現地では依然としてこどもが学校に行けず、農園などで労働されているという事態が続いているそうで、こどもの権利条約を学校や地域で定着させる活動もしているそうです。

ACE代表の岩附由香さんによると「どうすれば遠い国で起きていることを、日本で自分ごとにできるか」という点を模索しており、日本での啓発もしています。近年では森永製菓のキャンペーンの寄付先に選ばれるなど協力してくれる企業が増えてきたようです。

一方、個人への働きかけには課題もあります。ACEでは今年6月末まででクラウドファンディングを実施しました。目標である1500万円は達成したものの、寄付者は336人で目標の1000人には届きませんでした。

日本リザルツでも能登半島地震後、老眼鏡を各地で配布しながら、被さい者の方のお困りごとをうかがうという活動をしています。すでに地震から半年以上が経ち、ニュースでも話題に上らなくなり、「自分たちは忘れられてしまった」と感じるお年寄りも少なくありません。活動自体に派手さはありませんが、本当に困っているお年寄りの方と家族になり、心でつながることも重要な被さい地支援の1つだと考えています。

ACEの記事もそうですが、1人でも多くの方にこうした現場での地道な活動が重要であることを知っていただきたいと感じています。

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バイデン大統領の選挙戦撤退とトランプ氏:杉山晋輔元駐米大使のインタビューより

アメリカのバイデン大統領が秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦から撤退する考えを表明しました。そして、後任の民主党の大統領候補として、ハリス副大統領を支持し、ハリス氏も意欲を示しました。再選を目指す現職大統領が選挙戦の途中で撤退するのは1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりの事態です。


一方、共和党はトランプ大統領候補が指名を正式に受諾しました。


こうした中、日本リザルツと親交のある杉山晋輔元駐米大使のインタビューが掲載されていました。杉山氏は外務次官などを歴任された後、トランプ政権下の2018年〜21年に駐米大使を務めました。

杉山氏は駐米大使時代、他国の大使から「なぜ日本はトランプ前大統領と良い関係を築けたのか?」と尋ねられたそうです。当時の安倍晋三首相はトランプ氏の当選直後にニューヨークを訪れ、主要国で真っ先に会談をしました。実はこの会談、当時の安倍首相の鶴の一声で決まったようで、トランプ氏はその熱意に大変感銘を受け、その後も日米の合意文書などで「シンゾウが言っているのならOK」とトランプ氏の気持ちを安倍氏がつかんでいたことを紹介していました。

杉山氏はトランプ氏の特徴として「大きな戦略や絵姿を描くのを好む」とし、細かな事実関係や数字を説明しても響かないことを明かしました。安倍氏はその特徴も理解し、どれだけ日本が米国経済に貢献しているかをポンチ絵で紹介するなどの工夫をしていたとしています。

また、ビジネスマンだったトランプ氏は政治の場においても「取引」という言葉をよく用いていたとし、法律や道徳的な観点から善悪を説いても理解してもらえないので、取引によって米国がいかに豊かになるかという視点で提案をする必要があると指摘しています。

またトランプ氏が国際協調を軽視するという批判があることについては、トランプ氏はこちらがやるべきことをやれば防衛義務を果たす人であるとしており、現にウクライナ支援を容認するなどの動きを見せていると説明しています。

今後については日本が欧州などと連携し、日、米、そして世界がWin-Winの関係を築けるような構想を描いていくことでトランプ政権を良い方向に動かせるのではないかとしています。


以前、ケニアで日本の結核診断機器を導入するプロジェクトを実施した際、日本が多額に拠出するグローバルファンドのお金が日本企業に還元できるような仕組みづくりができるように働きかけを行いました。現在、ODAでもオファー型提案がはじまるなど、国際協力の在り方が見直されていますが、杉山氏のインタビューを読んでいて、日本や米国のようなドナーもODAを享受するレシピエントも、世界の困っているみなさんも、すべてにメリットがあるような仕組みができると、文字通り、持続可能な開発目標(SDGs)の実現につながるのではないかと感じました。

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2024年07月18日

ビル・ゲイツ氏の投稿を見て感じたこと

18日付の日経新聞にビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長のビル・ゲイツ氏の寄稿が載っていました。

ゲイツ氏はアフリカのワクチンはこどもの命を救うためにワクチンが大きな役割を果たしてきたとし、2030年代の早い段階で、SDGsが掲げる5歳未満のこどもの死亡を半減させたいと意気込んでいます。

また資金に関しては、ヘルスケアに関する資金調達の重要性を提唱し、途上国での備えがパンデミックの世界への拡大を防ぐとしています。

パンデミック条約に関しては、低所得国は病原体データの提供と引き換えにワクチンや治療薬を無償で使えるようにする仕組みの導入を求めていましたが、先進国との溝が埋まらず合意が先送りになりました。

ゲイツ氏は、自身の財団がパンデミックの際に特許問題が浮上する前にインドなどのメーカーに資金を出して生産を支援したことなどを引き合いに出したうえで、先進国の製薬企業に特許の取得などを通して、イノベーションのインセンティブを持ち続けてもらうことも大切だとし、健全なビジネス環境こそが良い薬の開発につながると強調しています。

この記事を見て感じたことが二つあります。

一つはパンデミック条約の議論に関して、先進国の企業寄りの考えに近い印象を受けました。私はパンデミックの最中にケニアにいましたが、とにかくケニアのスラムのような現地にはワクチンを買うお金はおろか、防護服すらなく、COVAXのようなスキームがなければ医療従事者でさえもワクチンを接種できませんでした。医療従事者がワクチンを打てなければ、院内感染を防げないのでヘルスセンターも運営ができません。ケニアのヘルスセンターは1か月間病院が開けられなかったので、結果としてこどもの定期予防接種に遅れが生じました。ゲイツ氏のような発信力、影響力のある方にこそ、ケニアのスラム街やゴミ山、すなのみ村のような取り残された地域に行っていただき、その現状を自分の目で一度確かめていただきたいと切に願います。

二つ目は資金調達に関してです。感染症抑止に関する基金はGavi、グローバルファンドなど沢山あり、国連機関も大なり小なりワクチンに関して貢献をしています。今、日本リザルツではパリ栄養サミットに向けたアドボカシーをしていますが、栄養に関しては包括的な基金がないのが現状です。こどもが感染症にかかるのは免疫力がないのが原因で、健康な体をつくるにはきちんとした栄養を摂取することが大切です。ワクチンという個別の話だけでなく、栄養や水・衛生など包括的な視点で取り組むファンドが必要なのではないかと感じました。

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posted by resultsjp at 17:20| Comment(1) | 情報