イスラエルとハマスとの間の6週間の停戦合意が1月19日に発効しました。今のところ大規模な戦闘はなく、合意に従って捕虜交換が行われ、停戦が履行されているようです。この6週間の第一段階の停戦の間に、第二・第三段階の停戦について協議し、恒久停戦を目指すというのが枠組みです。双方の交渉が進み、ガザに平和がおとずれることが期待されます。しかし、イスラエルの国内では戦闘継続を主張する声も強く、先行きは必ずしも楽観できません。
第一段階の停戦発効に伴い、物資の搬入が再開されました。19日から、ガザとエジプトの境界にあるラファ検問所のエジプト側から支援物資を積んだトラックが続々とガザに入りました。一日当り600台のトラックの入域が認められています。世界食糧計画(FAO)によると戦闘開始前は1日平均500台が入っていましたが、2023年10月に戦闘が始まると、その数は3分の一に減少し、食料や燃料が極端に不足し、ガザ住民の9割以上が深刻な飢餓に直面されているとされています。
国連パレスチナ難民救済機構(UNRWA)のラザリーニ事務局長は17日、「迅速に途切れない人道支援を続ける必要がある。停戦は出発点に過ぎない」と述べています(1月19日付日本経済新聞)。徐々に支援物資が搬入され、人道危機の状況が改善されることが期待されますが、食料品や燃料が広く行きわたるにも相応の時間が掛かることが懸念されています。
また医療などは、病院が破壊され、機能回復の道は険しそうです。世界保健機関(WHO)によると、ガザにある36の病院のうち半分しか稼働していません。仮設診療所を建設、ベッド数を増やし救急医療体制を強化する必要があります。医療体制確保のためには、食料、水、医療品に加え、病院用の発電燃料やスペア部品など様々な物資も欠かせません。一年以上にわたる激しい戦闘の結果として、様々なインフラが破壊され、その復旧には相当の時間と費用が掛かります。UNDPの試算によると、復興支援には800億ドル(約12兆円)の資金が必要とされるそうです。
また1月末にはUNRWAのイスラエル国内での活動を禁止する法律が施行される見通しです。一般市民の生活に加え、国連による支援インフラや、1万人以上の雇用にも影響が及ぶ可能性も指摘されています。復興への道は端緒についたばかりで、様々な課題を乗り越える必要があり、楽観は許されません。
昨日、白須理事長からUNRWAの清田保健局長にお電話をしたところ、「一旦は停戦したものの先行きは楽観できない、UNRWAも1月以降も活動停止となるとガザが大変なことになる」とのお話がありました。リザルツもUNRWAの応援団として、中東情勢を見守っていきたいと思います。
(2024年11月28日超党派人道外交議連で講演する清田局長)
(のーびっひ)