日本ではお正月に家族と過ごされる方が多いですが、ケニアではキリスト教徒の方が8割以上を占めるので、クリスマスが重要な祝日です。
11月下旬のブラックフライデーが終わると各地でクリスマスツリーなどの装飾が目立つようになります。
駐在員御用達のショッピングセンターに行くと、富裕層の子どもたちが楽しそうに遊んでいました。
ケニアの冬休みですが、12月半ばの独立記念日を過ぎると行政機関は開店休業状態になります。ナイロビに出てきている方はほとんどが出稼ぎ。皆さん、実家に帰ります。そしてクリスマスには親戚が集まって、ヤギや牛を絞め、丸焼きにしてお祝いするのが恒例行事だといいます。
そんなこんなで楽しいクリスマス休暇なはずなのです。
が、肝心の筆者は体調を崩し、救急外来にお世話になることに…
やってきたのはカンゲミヘルスセンターではなく、ナイロビ病院です。
ナイロビは交通事情は悪く、救急車を呼んでもすぐ来ないので、自分でタクシーを呼んで、病院に行きます。
これがナイロビ病院。見た目はショッピングセンター並みに豪華です。
公立のヘルスセンターは医療体制が脆弱のため、外国人の駐在員のみなさんは私立病院を受診する方がほとんどです。他にもいくつか大きな私立病院があります。
ケニアの医療事情はサブサハラ・アフリカの中では高水準のため、周辺諸国からもVIPが外来や入院しにきます。
「コロナはない」と言って物議を醸したタンザニアの故マグフリ大統領が亡くなる直前まで治療を受けていたという噂なのが、このナイロビ病院です。
https://www.bbc.com/japanese/56438903
病院のHPより。こんな個室もあります。
ケニアは12月に入り、季節外れの大雨と寒さが続いています。
この日は振替休日だったのですが、朝8時に来ると、長蛇の列ができていました。
筆者は先月も新型コロナウイルスとマラリア、結核の検査をしたばかり。コロナは簡易検査ですぐ結果がでますが、マラリアの血液検査は5日(注:簡易迅速診断キットによる診断はすぐに出る)、結核はGene-Xpertの台数に限りが出るので、なんと1週間も時間がかかりました。ケニア保健省はすでに国策として、ケニアでTB-LAMPの使用を開始していますが、スラム街やリモートエリアにある公立のヘルスセンターがメイン。TB-LAMPがここにあればと悔やむばかりです。
この日も診断キットでマラリアの検査をします。結果は陰性でしたが、なんと、こちらの蚊にアレルギーがあるそうで、飲み薬と塗り薬を処方されました。
こうした私立病院の一般の外来診察費は5,000円以上、それに初診代が同じくらいかかります。CTやX線撮影、血液検査が加わると2万円以上します。一般のケニアの皆さんの平均所得は月3万円ほどなので、どれだけ高額かよくわかると思います。
さらに大変なのは入院した時です。まず、7万円くらいの前払いを要求される上、個室の料金は1泊で1万5,000円くらいします。そのため、周りの人が入院するとケニアでは親戚や知り合いに借金をするケースが増えます。
尚、ケニアはグローバルファンドのレシピエントで結核やマラリアの診断・治療薬や機材を受注していますが、私立病院の検査費用は実費請求のようです。
薬も全て輸入品のため、日本と比べても高額です。抗生物質や解熱剤の飲み薬は5日分で2,000円、塗り薬も1,000円ほどしました。クレジットカード決済ができるのが唯一の救いです。
ケニアには日本のような「国民皆保険」はなく、公的な医療保険制度(NHIF)がありますが、加入率は2割程度と非常に低いの現状です。そこで、様々な民間の保険会社がサービスを提供しています。ケニアの民間の健康保険と日本の保険と違うところは、薬代も保険で賄われるほか、プランによっては歯科医療やコンタクトレンズの処方も民間の保険で賄うことができます。ただ、民間保険に入るのには最低でも5万円かかるので、入れるのは一部の富裕層だけです。
日本の皆保険制度がいかに恵まれているか、改めて実感した2022年のクリスマスでした。
(ぽ)