日銀の黒田総裁の後任に、岸田総理は、日銀の元審議委員で経済学者の植田和男氏を起用する意向を固めました。これまで日銀総裁は伝統的に財務省か日銀の出身者が就任しており、学者出身の総裁は戦後初めてです。
詳しい報道はこちらを参照:
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230211/k10013977831000.html
今回の日銀人事、国内はもとより、海外報道でもサプライズという見方が出ています。
ウォールストリートジャーナルは「異例」と評し、ロイター通信は、「植田氏は金融政策の専門家として知られていたものの、日銀総裁候補としてはダークホースとさえ見られていなかった」と伝えました。ちょっとユニークなのが、ブルームバーグ。「WHO‐EDA?(フーエダ?)」と植田氏の名前をもじったダジャレを披露していました。
ブルームバーグの報道(英語)
さて、植田氏はいったいどんな方なのでしょうか。
植田氏は東京大学やマサチューセッツ工科大学で、金融政策の研究をした後、1993年からは東京大学経済学部の教授を、2017年からは共立女子大学の教授を務めています。
その後、1998年から7年間は日銀の審議委員を務め、1999年の「ゼロ金利政策」や2001年の「量的緩和政策」の導入を理論面で支えました。日銀が2000年、ゼロ金利政策の解除を決定した際、植田氏は反対票を投じました。この後、世界経済が減速に転じたことで、日銀は翌年に再び利下げを迫られることになったことを踏まえ、この時の植田氏の決断について「政策決定の重要な節目では、歴史を振り返ると正しい場所にいた」と評している報道もあります。岸田首相はこうした一連の実績を高く評価したようです。
ブルームバーグの報道(日本語):
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-02-10/RPV1BXT0G1KW01
時事通信の評伝:
https://news.yahoo.co.jp/articles/ca4b04e61a966a95bb54936d4652700807cfe000
海外ではアカデミア出身者がこうした職に就くことは珍しくありません。植田氏はバーナンキ元連邦準備制度理事会(FRB)議長とほぼ同じ時期に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で学び、論文の指導者も同じだったそうで、サマーズ元米財務長官は植田氏を「日本のベン・バーナンキだと考えてもいいだろう」と評しています。
インタビューはこちらを参照:
https://news.yahoo.co.jp/articles/1e59464bc6dd2c0066a7d25a0af3303602cdf55e
脇を固める副総裁は2人です。1人目は前金融庁長官の氷見野良三氏です。氷見野氏は日本人で初めて主要国の金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)の常設委員会の議長を務めるなど国際金融情勢に精通しています。もう一人の副総裁は日銀理事の内田真一氏です。10年に1度の日銀のエースと呼ばれており、黒田総裁のもと日銀でマイナス金利政策を立案・設計してきたスペシャリストです。
読売新聞は今回の人事は「トロイカ体制」と評しています。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230211-OYT1T50003/
報道が出た直後、すぐに市場にも動きがありました。新体制の下で金融緩和は縮小に向かうという見立てにより、一時円相場は129円台後半になりました。その後、植田氏が記者団に対し、「現状では金融緩和の継続が必要だ」などと述べたことが伝わると、一転して円が売られる展開となりました。
詳しい報道はこちらを参照:
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230211/k10013978041000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230210/k10013977461000.html
新体制の日銀がどのようなスタンスで金融政策の運営に臨むのか、国内外から注目が集まっています。日本政府は、3人の人事案を14日に国会に提示することにしています。
日本リザルツでも今後の動向をしっかりチェックしていきたいと思います。
(ぽ)