2024年12月08日

ノーベル経済学賞にアセモグル氏らが決定

1014日、王立スウェーデン科学アカデミーはダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン、ジェームズ・A・ロビンソンの3人の経済学者に2024年のノーベル経済学賞を与えることを発表しました。受賞者3人の貢献は、国家間の繁栄の格差の原因が、制度に起因することを計量分析の手法で明らかにしたことにあります。以下、ノーベル賞委員会の発表資料※に沿って、受賞理由をご紹介します。

https://www.nobelprize.org/prizes/economic-sciences/2024/popular-information/


一つの象徴的な事例として、米国とメキシコの国境に位置するノガレスという同名の二つの街についての研究が紹介されます。ノガレスの街は、国境のフェンスを挟んで北側が米国アリゾナ州に属しますが、住民は相対的に裕福で平均寿命はより長く、ほとんどの子供が高校を卒業します。財産権は保護され、住民は自由選挙を通じて政治家を選択することができます。一方、フェンスの南側、メキシコのソノラ州に属するノガレスでは、住民はメキシコ国内では比較的裕福ですが、北側のレガノス住民に比べるとはるかに低い収入です。組織犯罪が横行しており、ビジネスにはリスクが伴い、腐敗した政治家を交代させるのは難しいという状況です。

両者がなぜ違うのでしょうか。気候や、住民の祖先はほぼ同じであるにも関わらうず。受賞者たちは、それは制度の違いが原因だとします。北側のアメリカに住む人たちは、教育を受ける権利や職業選択の権利を持っています。

そして、この制度の差異の影響が、16世紀以降の植民地化の中で一般的に認められることを実証しました。要約すると、

・感染症などによる欧州人の死亡率が高い地域では、植民者の定住を前提とせず、短期的に天然資源などを搾取する収奪的な社会制度が確立した(アフリカ、南米など)

・一方、死亡率が低い地域は、定住を前提に欧州の制度が移植され、所有権などの権利保護が進んだ(北米、オーストラリアなど)。

・大衆を搾取するために作られた制度は、長期的な経済成長にとって不利であり、基本的な経済的自由と法の支配を確立した制度は長期的な成長にとって良いことである。


さらに受賞者たちは、一部の社会が収奪的な社会制度に陥る理由を明らかにしたうえで、状況によっては国が、受け継いだ制度から脱却し、民主主義と法の支配を確立することが可能であることを示しています。そして長期的にはこうした変化が、長期的な成長や貧困の削減に繋がることを示唆しています。

このようにみると、彼らの議論は、我々が途上国の方々と協調して、政治、経済など様々な方面で開発協力を行う上で、一つの理論的な根拠づけを与えてくれるものと考えられます。


(参考文献)

・岡崎哲二「24年のノーベル経済学賞、国の豊かさに制度の影響解明」日本経済新聞、2024年10月25日

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1573S0V11C24A0000000/

・菊池信之介「アセモグルの弟子が解説、24年ノーベル経済学賞」東洋経済オンラインhttps://toyokeizai.net/articles/-/834064

・広野彩子「アセモグル氏ら3氏にノーベル経済学賞、歴史データから検証する政策の「帰結」」RIETIウェブサイト(https://www.rieti.go.jp/users/hirono-ayako/serial/007.html


(のーびっひ)

posted by resultsjp at 22:25| Comment(1) | 情報
この記事へのコメント
わかりやすく要約してあって
素敵だからFBでシェアさせていただきました
Posted by ぴえ〜るママ at 2024年12月17日 09:45
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