2025年05月01日

【資料】SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)への意見書

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外務省が「持続可能な開発目標(SDGs)に関する自発的国家レビュー(VNR)」についてのパブリックコメントを募集しましたので、提出しました(418日)。

外務省案はこちらから

コメントの主旨:

公的な開発資金調達を図るということで、国際連帯税のことはもとより、SDR(特別引き出し権)や円借款の利子の利用ということも提案しました。

SDRについては外貨準備として585.4億ドル(約8.5兆円)も保有されています。外貨準備全体としては12,725億ドルもありますので、SDRはあってもなくても大勢に影響はありません。従って、SDRは途上国支援に回せと。なお、昨年の自民党の総裁選挙で当時の茂木幹事長も溜まりすぎた外貨準備金を利用しようと言っていましたが、今やいろんな政党の人が目を付けています。

円借款の利子は、額は多くはありませんが、12,000億円程あります。これに財務省からの出資金8兆円と合わせて自己資本と言っています。この12,000億円(の一部)を無償資金の方に使うべきという提案です。ご承知のように、円借款とは有償資金(ローン)で日本のODA70%近くを占めていて、結局利子が生じそうなところに融資しています(内容は圧倒的にインフラ整備)。従って、アフリカ等のLDCs(後開発途上国)にはほとんど融資されていません。以下、提出した意見です。


SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)への意見書

意見:

(全般)

2030年に向けてのSDGs達成がきわめて困難な状況にあることをまず確認しましょう。それは、第一に、新型コロナウイルス・パンデミックやロシア・ウクライナ戦争などの地政学的危機を経て、SDGs達成の折り返し時点の2024年においても、その進捗状況が15%程度という危機的状況にあったこと(「国連未来サミット」)、です。第二に、今年に入り、米国トランプ政権が米国際開発庁(USAID)を実質的に閉鎖し、世界中での食料や医療支援などの人道援助を極めて困難にし、その上に「SDGs拒否」を表明したこと、です。加えて、欧州の国際援助有力国が遺憾なことにODA拠出を削減し始めました。

こうした状況から、私たちはSDGs達成の危機的事態を確認するとともに、しかし「一人も取り残さない」という理念にもとづき厳しいながらも前進を図っていかなければなりません。

SDGs達成危機の最大の要因は、途上国での取り組みの停滞と後退にありますが、何よりも開発資金の不足によるものです。つい昨年まで、その資金ギャップは年間42000億ドルと試算されていました。一方、世界のODA資金はトータルで2,121億ドル(2024年)であり、一桁も足りません(しかも、多くをウクライナ支援に拠出)。

そこでこのギャップを埋めるべく、国連は資金調達の手段として、「政府開発援助の目標の達成、民間セクターの投資、国内リソースの動員、包摂的かつ効果的な国際租税協力、富裕層に対する国際的な最低課税水準の検討など」(「未来のための協定」より)を提言しました。このような提言をどう具体化していくか考えていきます。

(重点事項C:国際社会との連携・協働)

世界銀行や主要援助国はもっぱら民間セクターの投資(民間資金の動員)に力点を置いていますが、最も必要としている国やセクターに届いていないという現実があります。それは「…民間資金の動員は、ほとんどが中所得国で、銀行・金融サービス、エネルギー・産業、鉱業、建設など、収益源が明確なセクターで行われている」(OECDUNDP2021年)からです。

債務危機に陥っている国や気候脆弱国等、最も資金を必要としている国やセクターにはやはり公的資金が必要です。その第一歩はODA資金であり、我が国は財政的に困難な中で削減を行っていないことは多としますが、しかし国際目標からほど遠いことを反省しなければなりません。すなわち、2023年時のODA拠出は、GNI0.7%目標に対して0.44%(20240.39%)、LDCs向け目標GNI0.150.20%に対してわずか0.09%に留まっています。毎年目標を掲げるだけではなく、目標実現のための工程をきちっと打ち立てるべきです。

我が国のODAのあり方の抜本的改革が必要です。開発協力大綱の改定において、重点政策として「人間の安全保障」の理念を踏まえ、脆弱国・地域等への協力に取り組みつつ、SDGs達成に向けた取組を加速化すると謳っていますが、ODAの主力は円借款(有償援助)であり全体の63.0%を占めており、無償援助=贈与は36.1%です(2022年)。円借款方式ではプロジェクト実施後、元本と利子を返還してもらわないとなりませんが、いくら利子が一般の金融市場より低いとはいえ、一定利益を得ていなければ返還は可能ではありません。このことがLDCs向けがわずか0.09%に留まっている理由と思われます。脆弱国・地域等への協力はやはり無償援助資金でなくてはなりません。

さらに、円借款融資の地域の極端な偏りです。承認額で見ると(全体で21,258億円)、アジアが77%、アフリカが1.2%、残高でみると(全体で14,207億円)アジアが76%、アフリカが4%となっています(2023年)。本当に開発資金を必要としているサブサハラ諸国など債務危機に見舞われている国への援助を、地域を超えて増やすべきです。

(開発資金)

援助国においてはどの国も財政が厳しく、公的資金としてのODAを飛躍的に増加させることが困難であること、また民間資金の動員も期待できないことから、革新的な資金調達メカニズムを考えるべきです。

ひとつは、国際連帯税方式です。もっとも実施が容易なのは航空券連帯税である。実際フランスや韓国、チリ等が実施し、連帯税ではないが航空券税はほとんどの国で実施されています。我が国では出国税として国際観光旅客税が実施されているので、入国税として実施すべきです。また、株式取引税としての金融取引税も有力です。連帯税ではないが、30数か国で実施されています(我が国でもかつて有価証券取引税として実施されていた)。

ふたつは、国際条約を使っての国際連帯税の実施で、現在「国際租税枠組み条約」の議論が始まっていますが、この条約下の議定書において、超富裕層への課税や為替取引税としての金融取引税、などが考えられます。

みっつは、SDR(特別引き出し権)の利用です。2021年にIMFは貧困国へのSDR再配分を決め、我が国は当初の20%から40%に引き上げ159億ドル分を拠出し、国際社会から評価されました。ところで、我が国の外貨準備を見ますと、総額は12,725億ドルですが、うちSDR585.4億ドル(約84,883億円)あります(20253月末現在)。つまり、総額の5%程度です。従って、このSDR585.4億ドルをそっくり途上国への援助に使っても外貨準備という枠から見れば大勢に影響はありません。毎年4,000億円をODAにプラスしても21年拠出が可能です。

よっつは、円借款で生ずる利益金の無償資金への繰り入れです。有償資金協力勘定を見ますと、準備金として表記されている利益金は12,554億円あります(26年度9月末)。金額的にはそう多くはありませんが、利益金の一部をまた円借款使うのではなく、無償資金に使うようにすべきです。

グローバル連帯税フォーラム・田中徹二

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)
posted by resultsjp at 15:02| Comment(0) | 国際連帯税の推進
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