2014年08月29日

レイテ島 結核調査報告29(調査報告5)

今回は、3.被さい前後の結核症例登録グループと症例数についての調査結果です。

3.被さい前後の結核症例登録グループと症例数
結核症例登録グループは、それぞれの患者さんが結核(肺、肺以外問わず)症例として登録される際の根拠別にグループ分けをしたもので、a.喀痰塗抹検査陽性、b.再燃症例、c.DOTS治療をしていた他の施設より転院、継続治療する症例、d.過去に治療を中断したことがある症例、e.過去に結核治療をしていたが、治療に失敗(治療開始5か月、もしくは5ヶ月以降になっても、細菌学検査の結果が陽性)している症例、f.上記のどれにもあてはまらない検査等(細菌培養、ツベルクリン検査)、g.肺以外の結核、h.X線検査で結核を示す結果があった症例、i. 喀痰塗抹検査陰性、の9つのグループに分かれています。
この調査では、対象地域の第一次保健施設(町/地区保健所)における2011〜2014年第一四半期の、全結核症例登録グループとそれぞれの症例数を調べました。(一部台風の被害等で得ることが不可能)

いずれの時期・地域においても、喀痰塗抹検査陽性結果が診断根拠(=NTP登録のための根拠)となったケースが大多数でした。喀痰塗抹検査陰性でもX線検査で結核を示す所見や臨床症状でNTP登録されるために、このカテゴリーでの登録症例数も多くみられました。再燃症例はレイテ州では報告があるものの、タクロバンやオルモック市では非常に少なく、毎年10例以下となっています。

*結核調査結果の詳細については、日本リザルツ東京オフィスへお問い合わせください。(wku)
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レイテ島 結核調査報告28(調査報告4)

前回に引き続き、調査報告です。

2. 被さい前後の結核の種類と症例数

患者人数は調査対象地域で2012年に4383人、2013年に4304人。働き盛り(25〜64歳)の男性患者の割合は69.7%(2012年、レイテ州)でした。

調査対象地域内における2011〜2014年第一四半期の肺結核と肺以外の結核症例数とその割合を調べたところ、レイテ州、タクロバン市、オルモック市、東ビサヤ地域それぞれの場所、時期においても肺結核が全結核症例の96〜100%を占めていました。また、レイテ州、タクロバン市、オルモック市を合わせた症例数は、東ビサヤ地域全症例の約半数を占めていることもわかっています。そのうち肺結核症例は上記3地域の症例合計数は常に東ビサヤ地域全症例の約50%、肺以外の結核については時期によって大きく変動しており、全症例の18〜55%を占める結果となりました。今回収集したデータには小児結核患者症例数の影響は非常に少なく、従って調査結果は15歳以上の結核患者におけるデータと考えても大きな相違はないことも分かりました。

ただ、この調査結果からは2013年11月の台風ハイエン前後における結核症例数の変動の考察は困難です。というのは、台風被さい前の2011〜2013年で全結核患者数の増加が見られているのは、保健省が推奨している「コミュニティにおける結核患者の積極的患者発見」が浸透してきていることによるものであるためです。

サービスを開始してから約1年と日が浅いパロPMDT(薬剤耐性結核治療施設)では、多剤耐性結核症例(MDR-TB)はあるものの、超多剤耐性結核症例(XDR-TB)についてはまだ報告例がありませんでした。

小児結核症例については、その認識が最近になって得られてきていることと、治療薬の供給はあってもツベルクリン反応検査薬(PPD)の供給がないために対応が遅れています。聞き取り調査では2012年頃からPPDの供給が行われていないということでしたが、調査中の2014年5月初旬から再供給されたとの情報を得ています。保健省は、ツベルクリン検査が出来ない場合の小児結核疑い患者や予防措置が必要と考えられるケースについての診断と対応についてガイドラインを制定しているものの、調査対象地域では成人に対する喀痰塗抹検査やX線検査のように、小児に対してはツベルクリン反応検査を重要視し、ツベルクリン反応検査が出来なければ対応を行わない地域が大多数を占めていました。

*結核調査結果の詳細については、日本リザルツ東京オフィスへお問い合わせください。(wku)
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2014年08月27日

レイテ島 結核調査報告27(調査結果3)

前回の調査結果報告記事から少々時間が経過してしまいましたが、結核調査報告ブログ終了まであと数回となりました。

さて、被さい前後の結核予防・診断・治療に関する現状に関しては、以下の5項目を調査しています。
1. 結核ワクチンと接種状況
2. 結核の種類と症例数
3. 結核症例登録グループと症例数
4. PhilPACTターゲット達成状況
5. 保健施設とその被さい状況

1. 結核ワクチンと接種状況:フィリピンでは、生後24時間以内にBCGを接種することとなっており、その接種は全新生児の95%以上をターゲットとしています。生後24時間以内に接種することとなっているBCGは、調査地域においては生後24時間以内、そうでなければ生後11ヶ月以内(オルモック市)、生後1歳未満(タクロバン市)生後間もなく(レイテ州)に接種することとなっています。

台風被さいによるデータ損失でタクロバン市の2011〜2013年の正確なデータは入手できませんでしたが、調査対象地域の2011〜2014年第一四半期(1〜3月)のBCG接種率を調べた結果、BCG接種率はターゲットである95%を下回る結果となっていました。
考えられる原因としては、ワクチン接種に関するもの、ワクチンの在庫状況のほか、昨年の台風ハイエン襲来直後は開いている町/地区保健所は少なく、多くの住民がレイテ島外に避難しており、2014年第一四半期の1〜3月になってもまだ避難中の住民がいることも、予防接種率の低下に繋がっています。(wku)

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2014年08月05日

レイテ島 結核調査報告26(調査結果2の補足)

昨日のブログに対し「調査結果になぜ地域差が出てくるのか興味深い」という貴重なコメントを頂きましたので、今回補足説明をさせて頂きます。コメント投稿して下さった方、有難うございます。

「ヘルスサービスの地域差」は、1991年にフィリピンで地方自治法が施行された事が主要因の一つに挙げられます。
地方分権化により、保健省中央(マニラ)が主導していた保健行政に関する全権限と責任は、地方自治体の保健局に移譲されたと同時に、分権化によって人員、施設、予算のすべてが地方自治体の手に移管されました。地方自治法施行以降、中央政府は保健政策策定やその実施権限を所持し、17の保健省地域局を通して自治体に対し技術面での支援・指導は行いますが、種々の国家プログラムの現場レベルの実践度合いは、実質的なサービス提供の責任を有する地方自治体(州、市、町)の裁量に委ねられるところが大きくなっています。今回の調査地域だけでなく、フィリピン全体として地方分権化による保健医療サービスの地域間格差の問題が懸念されているという状態です。

現在、フィリピンでの結核対策のメインは、町保健所(州)、地区保健所(市)となっています。それぞれの保健所は町や市政府が管理しており、NTPの実施状況は町・市のガバナンスや財政状況等に大きく左右されてしまうのが現状です。調査地域で確認された4つの重点戦略のうち、「8.コミュニティでの結核ケア(Community TB care)」はこれにあてはまり、今回の調査はコミュニティレベル、州、市が対象だったために、結果としてこの部分が色濃く出てきました。

他、「2.病院におけるTB-DOTS強化(Enhanced hospital TB-DOTS)」、「3.薬剤耐性結核のプログラムを通した管理(Programmatic management of DR-TB)」、「5.刑務所における結核(TB in prison)」に関しては、コミュニティより数レベル上の保健省レベルでの話ではありますが、必要機材購入、建設費用や、プログラム実施のための人材育成(研修費用)、これらプログラムを管理する人材を雇用する費用等の「お金」の部分が主要因であると考えられます。(wku)


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レイテ島 結核調査報告25(調査結果2)

前回のブログで簡単にご紹介させて頂いたNTPですが、今回の調査対象地域であるレイテ州、タクロバン市とオルモック市におけるNTPの8つの重点戦略実施状況を調べました。
以下がNTPの8重点戦略です。

1.公私協働でのDOTS実施(Public-Private mix DOTS)
2.病院におけるTB-DOTS強化(Enhanced hospital TB-DOTS)
3.薬剤耐性結核のプログラムを通した管理(Programmatic management of DR-TB)
4.結核とHIV/AIDS二重感染に対する諸活動(TB HIV/AIDS collaborative activities)
5.刑務所における結核(TB in prison)
6.TB-DOTS認証、認定(TB-DOTS certification and accreditation)
7.結核臨床検査センターの増設(Expansion of TB laboratory services)
8.コミュニティでの結核ケア(Community TB care)

調査地域においては、、NTPの8つの重要戦略のうち2、3、5、8については地域差があるものの確認されています。
一方で、1は調査対象地域のプライマリーヘルスケアセンターでは現在のところ実施されていません。プライベート病院やクリニックでは、公立の保健施設と同様の手順で結核の診断・治療を行っていないだけでなく、レポーティングシステムが公立の保健施設のように確立されていないために患者数等を把握することが出来ない等の問題もあります。
4、7は今まさに保健省や保健省東ビサヤ地域局で対応がされてようとしているところです。
6については、2種類の認証、認定システムのギャップと、認証のためのプロセスが現場の状況に即していないことが問題となっており、レイテ州保健局の結核プログラム責任者(Dr. Maria Teresa Caidic)が問題点として認識していました。

次回以降は、被さい前後の結核予防・診断・治療に関する現状に関する調査結果をご報告いたします。(wku)
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