2018年09月18日

ケニアスタッフの投稿文

日本リザルツケニアスタッフ、Calvinが投稿した文を和訳したものをご紹介します。

孤児や弱い立場に置かれた子どもたちの健康保険加入


ナイロビ州にある医療保健組織、国家病院保健基金(NHIF)は、ユニバーサル・ヘルスカバレッジ達成への取組みとして、2019年までに36万人以上の孤児や弱い立場におかれた子どもたちを健康保険に加入させることを目標に掲げました。
健康保険補助プログラム(HISP)を通じて、年間20億ケニアシリング(約22億円)が支出されます。
NHIFは現在、経済的な理由で保健サービスを利用することができない、貧しい人や立場の弱い人を対象とした健康保険補助プログラムを実施しています。
HISPは、労働・社会保障サービス省により見出された孤児や弱い立場に置かれている子どもの世帯を対象としており、NHIFの保険料を政府が拠出することで、NHIF国家計画で定められた良質な保健サービスを確実に受けられるようにしています。
この資金援助を通じ、NHIFの支援を受ける世帯数は2014年の21,000世帯から2018年6月には181,000世帯へと増加しました。
ケニアには極度の貧困状態に置かれた人がおよそ900万人いることから、NHIFはより多くの貧しい世帯や弱い立場にある世帯へ手を差し伸べることで、UHC実現へ向けた政府の取組みに対する支援を続けていきます。

Calvin Ouma


この取組みを通じ、取り残されてきた人々が安心して保健サービスを受けられるようになることで経済的自立へ向かってゆけるといいと思います。
UME

2018年07月08日

結核患者の多面的経済負担を乗り越えて

7月4日、『ケニアにおける結核患者達とその家族らが背負い込む経済負担の評価』という調査が発表された会議に出席しました。
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その会議では、結核を患うことで生まれる多面的経済負担が、様々な角度と結核に纏わるストーリーを通して分析され、論じられました。
この調査の目的は、結核患者の経済負担の主要的な動力とその大きさを記録し、結核治療に伴う経済負担を減らすための政策をを導くことでした。
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自分は、人生の大半を母国である日本で生まれ育ち、国民健康保険などの社会保障に恵まれました。そして、1つの病気で家計が困窮する状況に陥りませんでした。その境遇から今回の会議を通して、以下の質問を投じます。

「もし、人々の年収の5分の1以上が結核により失われたらどうしますか。」

上記の調査では、ケニアの30の準郡で1,353の結核患者達を対象に、上記の調査目標を達成するための情報収集が行われました。その調査結果から、26,041.49ケニアシリングが、対象全体の中間の経済負担の数字として打ち出されました。この数字に含まれる経済負担は、診断にかかる費用、病院までの交通費、生産的時間の消失など多岐にわたります。

ケニアの保健省の発表では、2018年4月時点で全体の33.6%のケニア人が1日2ドル以下で生活をしております。もし、そのような境遇に生きるケニア人が、結核により26,041.49ケニアシリングの経済負担を抱える状況とはいかなるものでしょうか。この調査では、薬剤感受性結核患者が上記の数字に似た経済負担を抱えることが分かりました。一方で、薬剤耐性結核患者は薬剤感受性患者の6倍の経済負担、145,109.53ケニアシリングの経済負担を抱えることが分かりました。その負担は、追加の栄養補給や生産的時間の消失により生まれるものです。

冒頭で述べた質問を当団体がカンゲミ地区で行う結核予防事業に照らすと、どのような反応が生まれるでしょうか。本事業に従事する自分は、カンゲミヘルスセンターに訪れる結核患者のストーリーに耳を傾け続けたいです。そして、カンゲミ地区が抱える特有の課題と人々の持つ可能性を模索し、ケニア国家の社会保障体制と結核患者、コミュニティの人々、地元の保健省などがより繋がっていけるような活動をしていきたいです。

(智貴)

参考資料
・Kenya's First National TB Patient Cost Survey: An Assessment of the Economic Burden Incurred by TB Patients and Their Households in Kenya. the National Tuberculosis, Leprosy and Lung Disease Programme of the Ministry of Health of Kenya, June 2018
http://www.health.go.ke/kenya-prioritizes-universal-health-coverage/ (8th July, 2018)



2018年05月31日

ASEFハイレベルミーティング

アジア欧州財団(ASEF)主催で5月30日及び31日に開催されている、公衆衛生ネットワーク10周年記念行事「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) −感染症と闘うツールとしてのUHC−」にオブザーバーとして出席しました。UHC及び薬剤耐性(AMR)対策の専門家がアジア及び欧州の22か国から集まり、どうすればAMR問題をUHC普及の中に組み入れることができるかということについて話し合われました。ラオスのように保健医療において発展途上の国の代表者から、進んでいる国の推奨事例を導入するのに有効なツールがないかという質問があったり、スウェーデンのように保健医療の分野で先進的な国で、今後薬剤耐性菌を保有する人の増加及び薬剤耐性菌対策費用の爆発的増加を予想しているという発表があったりと、各国の問題意識や、国際的に協調してそれらの問題に取り組もうという姿勢を感じました。
UME

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2015年09月11日

G7保健ネットワーク会合の第1回ミーティング

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9月7日(月)、G7保健ネットワーク会合の第1回ミーティングがあり、日本リザルツも参加しました。来年5月に開催されるG7伊勢志摩サミットに向けて、日本のNGOも準備を進めつつありますが、国際保健分野で活動するNGOネットワークが立ち上げられ、事務局はジョイセフさんが務めています(ありがとうございます)。

参加団体は現時点でジョイセフ、アフリカ日本協議会、HANDS、マラリア・ノーモアジャパン、ストップ結核パートナーシップ日本、ワールド・ビジョン・ジャパン、セイブザチルドレン、日本リザルツの8団体です。

会合では、2008年G8北海道洞爺湖サミットにおけるNGOの活動経験や過去のコミットメント、プロセスを振り返りつつ、今回のサミットでは何を目標とするか等、今後の活動の焦点とイメージを皆さんで議論しました。

保健分野を含む日本のODA増額、SDGs達成に向けたコミットメント(SDGsができて初めてのサミットとなる)、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジやヘルス・ガバナンスにおける市民社会の役割等に関して、意見を発信していく必要性を共有できたと思います。

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既に政府は国際メディアセンターを三重県営サンアリーナに設置することを発表しました。サミット主会場の賢島から約20キロの距離だそうですが、日本はもちろん、世界各国のNGOもここに集まることになります。

また、官邸ホームページではサミットのロゴを募集しています(また盗作問題が起きないといいですね)。

(2008年の参考資料)
「2008年G8サミットNGOフォーラム報告書」(JANIC)
「サバイバル・キット 国際保健とG8」(アフリカ日本協議会)
(高木)

2015年07月24日

世界銀行UHCセミナー

7月23日(木)、世銀東京事務所で開催されたセミナー「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて:保健医療セクターの人材育成の課題と対応」に参加しました(参照:世銀)。今回は世銀保健・栄養・人口主任保健専門官の前田明子さんより、UHCの実現に向けて特に保健人材の育成の課題についてプレゼンがありました。

・途上国での保健人材の雇用は、所得水準や景気動向に関わらず、今後増加する見通し。
・しかし低所得国では2030年までのニーズを満たすには、人材を年間11%増やす必要性があり、これはかなり難しい数字。

ジョイセフ石井澄江代表理事は、プライマリーヘルスケアの重要性と人材の定着率を上げることが難しい旨、またGRIPS小林尚行特任教授は各国の保健人材の労働市場のDemandとSupplyをよく分析することは重要でその全体を踏まえて各援助機関は仕事をするべきとのコメントがありました。

世銀は昨今、母子保健分野においてカナダ、ノルウェー、米国とともに、GFF(グローバル・ファイナンス・ファシリティ)を立ち上げ、今後5年間で120億ドルの資金調達を見込み、62か国を支援する計画を発表するなど、2030年までのSDGs達成やUHC実現に向けてその存在感を増しています(参照:世銀)。債権を発行して市場から資金調達するのはワクチン債と同じやり方ですが、どんな資金でも各国の現場レベルでうまく連携が行われることは引き続き重要だと思います(高木)。

【参考記事:世界銀行保健・栄養・人口グローバルプラクティス シニアディレクター、ティム・エバンズ氏の投稿】
"Global Financing Facility and a new era for development finance"