2018年07月08日

結核患者の多面的経済負担を乗り越えて

7月4日、『ケニアにおける結核患者達とその家族らが背負い込む経済負担の評価』という調査が発表された会議に出席しました。
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その会議では、結核を患うことで生まれる多面的経済負担が、様々な角度と結核に纏わるストーリーを通して分析され、論じられました。
この調査の目的は、結核患者の経済負担の主要的な動力とその大きさを記録し、結核治療に伴う経済負担を減らすための政策をを導くことでした。
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自分は、人生の大半を母国である日本で生まれ育ち、国民健康保険などの社会保障に恵まれました。そして、1つの病気で家計が困窮する状況に陥りませんでした。その境遇から今回の会議を通して、以下の質問を投じます。

「もし、人々の年収の5分の1以上が結核により失われたらどうしますか。」

上記の調査では、ケニアの30の準郡で1,353の結核患者達を対象に、上記の調査目標を達成するための情報収集が行われました。その調査結果から、26,041.49ケニアシリングが、対象全体の中間の経済負担の数字として打ち出されました。この数字に含まれる経済負担は、診断にかかる費用、病院までの交通費、生産的時間の消失など多岐にわたります。

ケニアの保健省の発表では、2018年4月時点で全体の33.6%のケニア人が1日2ドル以下で生活をしております。もし、そのような境遇に生きるケニア人が、結核により26,041.49ケニアシリングの経済負担を抱える状況とはいかなるものでしょうか。この調査では、薬剤感受性結核患者が上記の数字に似た経済負担を抱えることが分かりました。一方で、薬剤耐性結核患者は薬剤感受性患者の6倍の経済負担、145,109.53ケニアシリングの経済負担を抱えることが分かりました。その負担は、追加の栄養補給や生産的時間の消失により生まれるものです。

冒頭で述べた質問を当団体がカンゲミ地区で行う結核予防事業に照らすと、どのような反応が生まれるでしょうか。本事業に従事する自分は、カンゲミヘルスセンターに訪れる結核患者のストーリーに耳を傾け続けたいです。そして、カンゲミ地区が抱える特有の課題と人々の持つ可能性を模索し、ケニア国家の社会保障体制と結核患者、コミュニティの人々、地元の保健省などがより繋がっていけるような活動をしていきたいです。

(智貴)

参考資料
・Kenya's First National TB Patient Cost Survey: An Assessment of the Economic Burden Incurred by TB Patients and Their Households in Kenya. the National Tuberculosis, Leprosy and Lung Disease Programme of the Ministry of Health of Kenya, June 2018
http://www.health.go.ke/kenya-prioritizes-universal-health-coverage/ (8th July, 2018)



2018年05月31日

ASEFハイレベルミーティング

アジア欧州財団(ASEF)主催で5月30日及び31日に開催されている、公衆衛生ネットワーク10周年記念行事「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) −感染症と闘うツールとしてのUHC−」にオブザーバーとして出席しました。UHC及び薬剤耐性(AMR)対策の専門家がアジア及び欧州の22か国から集まり、どうすればAMR問題をUHC普及の中に組み入れることができるかということについて話し合われました。ラオスのように保健医療において発展途上の国の代表者から、進んでいる国の推奨事例を導入するのに有効なツールがないかという質問があったり、スウェーデンのように保健医療の分野で先進的な国で、今後薬剤耐性菌を保有する人の増加及び薬剤耐性菌対策費用の爆発的増加を予想しているという発表があったりと、各国の問題意識や、国際的に協調してそれらの問題に取り組もうという姿勢を感じました。
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2015年09月11日

G7保健ネットワーク会合の第1回ミーティング

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9月7日(月)、G7保健ネットワーク会合の第1回ミーティングがあり、日本リザルツも参加しました。来年5月に開催されるG7伊勢志摩サミットに向けて、日本のNGOも準備を進めつつありますが、国際保健分野で活動するNGOネットワークが立ち上げられ、事務局はジョイセフさんが務めています(ありがとうございます)。

参加団体は現時点でジョイセフ、アフリカ日本協議会、HANDS、マラリア・ノーモアジャパン、ストップ結核パートナーシップ日本、ワールド・ビジョン・ジャパン、セイブザチルドレン、日本リザルツの8団体です。

会合では、2008年G8北海道洞爺湖サミットにおけるNGOの活動経験や過去のコミットメント、プロセスを振り返りつつ、今回のサミットでは何を目標とするか等、今後の活動の焦点とイメージを皆さんで議論しました。

保健分野を含む日本のODA増額、SDGs達成に向けたコミットメント(SDGsができて初めてのサミットとなる)、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジやヘルス・ガバナンスにおける市民社会の役割等に関して、意見を発信していく必要性を共有できたと思います。

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既に政府は国際メディアセンターを三重県営サンアリーナに設置することを発表しました。サミット主会場の賢島から約20キロの距離だそうですが、日本はもちろん、世界各国のNGOもここに集まることになります。

また、官邸ホームページではサミットのロゴを募集しています(また盗作問題が起きないといいですね)。

(2008年の参考資料)
「2008年G8サミットNGOフォーラム報告書」(JANIC)
「サバイバル・キット 国際保健とG8」(アフリカ日本協議会)
(高木)

2015年07月24日

世界銀行UHCセミナー

7月23日(木)、世銀東京事務所で開催されたセミナー「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて:保健医療セクターの人材育成の課題と対応」に参加しました(参照:世銀)。今回は世銀保健・栄養・人口主任保健専門官の前田明子さんより、UHCの実現に向けて特に保健人材の育成の課題についてプレゼンがありました。

・途上国での保健人材の雇用は、所得水準や景気動向に関わらず、今後増加する見通し。
・しかし低所得国では2030年までのニーズを満たすには、人材を年間11%増やす必要性があり、これはかなり難しい数字。

ジョイセフ石井澄江代表理事は、プライマリーヘルスケアの重要性と人材の定着率を上げることが難しい旨、またGRIPS小林尚行特任教授は各国の保健人材の労働市場のDemandとSupplyをよく分析することは重要でその全体を踏まえて各援助機関は仕事をするべきとのコメントがありました。

世銀は昨今、母子保健分野においてカナダ、ノルウェー、米国とともに、GFF(グローバル・ファイナンス・ファシリティ)を立ち上げ、今後5年間で120億ドルの資金調達を見込み、62か国を支援する計画を発表するなど、2030年までのSDGs達成やUHC実現に向けてその存在感を増しています(参照:世銀)。債権を発行して市場から資金調達するのはワクチン債と同じやり方ですが、どんな資金でも各国の現場レベルでうまく連携が行われることは引き続き重要だと思います(高木)。

【参考記事:世界銀行保健・栄養・人口グローバルプラクティス シニアディレクター、ティム・エバンズ氏の投稿】
"Global Financing Facility and a new era for development finance"

2015年06月10日

GHITファンドの国際シンポジウムに参加

6月5日(金)、GHITファンドの国際シンポジウム「JAPAN’S R&D INNOVATION FOR GLOBAL HEALTH」に参加しました。

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なかなか聞きなれない言葉かもしれませんが、GHIT Fund(ジヒット・ファンド)とは、「公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund)の略称です。日本の民間企業、政府、ビルゲイツ財団が連携して、日本に本部を置く国際的な非営利組織として、2013年4月に設立されました。最貧国で多くの人々が治療薬、ワクチン、診断薬などにアクセスできない現状を改善するために、日本と海外の国際的な製品開発パートナーシップを促進しています。

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開会の挨拶を行うスリングスビー B.T. GHITファンドCEO

パネルディカッションでは、ビル&ゲイツ財団のトレバー・マンデル氏、ロンドン大学衛生熱帯医学大学学長のピーター・ピオット氏、自民党国際保健医療戦略特命委員会委員長の武見敬三氏、武田薬品工業株式会社・代表取締役の山田忠孝氏といった、世界や日本の政界、医療界、学会を代表する方々が、これから国際保健分野で日本がどのように貢献できるか、真剣に討議されました。

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日本が誇る新薬開発の技術力、イノベーションを世界に届けるべきだという議論の中で、山田氏の「感染症によって途方もない数の人々が世界中で死んでいく中で、なぜもっと切迫感を持たないのか」という発言が印象的でした。

来年のG7では日本で議長国を務めるなど、今年から来年にかけて日本に対する期待はますます高まっています。昨年はエボラ熱が話題となり、日本でもデング熱が広がりましたが、世界中で人々の移動が容易になった今日、感染症の話は決して他人事ではありません。

そのような中で、政府や研究者にこの問題を丸投げせず、我々ひとりひとりが、「日本人として何が出来るか、何をすべきか」声を上げる時期が来ていると思います。
(大崎)