2023年09月11日

この夏の国際連帯税(金融取引税):ブレーキかかる日本、動き出している世界

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1、日本外務省、4年連続して国際連帯税の新設要望を断念

政府関係の24年度税制改正の要望が8月末に締め切られましたが、外務省は私たちの要求にもかかわらず、今年度も国際連帯税の新設要望を提出しませんでした。これで2021年度税制改正要望以降4年連続して断念したことになります。

一昨日(99日)「コラム:中ロと高まる緊張、見直されるG7 課題は途上国支援の本気度」というロイター通信記事が目に留まりました。コロナ・ワクチンを迅速に途上国へ供給しなかったことや気候資金1000億ドルの拠出の公約破り等など「G7による近年の途上国支援の実績も乏しい」と記事は述べていますが、グローバルサウスはG7を心から信用していないということでしょう。とくにコロナ・ワクチンの先進国の買い占めは酷いもので、それがために自国ワクチンを供給した中国が途上国への影響を高めたことは記憶に新しいところです。

ともあれ、グローバルサウスとの連携がキーポイントと言うなら、G7は本気度を見せないとならないでしょう。それを担保するにはまず資金です(含む、債務帳消し)。しかし、G7の中で日本政府に至っては、圧倒的に借金財政に陥っており、これ以上ODA(開発支援資金)を増やせる状況ではありません。ならばG7広島やG20大阪サミットの首脳コミュニケで謳われている革新的資金調達メカニズムを真剣に考えるべきではないでしょうか。外務省のみならず政府全体が途上国支援に対して本気度を見せていないことは実に遺憾と言わねばなりません。

2、世界で動きはじめているグローバル・タックス(金融取引税等)

1)第1回アフリカ気候サミット>新たなグローバルタックス呼びかけも

94-6日、ケニアのルト大統領とアフリカ連合主催で開催されたアフリカ気候サミットは、ナイロビ宣言で締めくくられました。世界のメディアは「気候変動対策に資金を提供するための新たなグローバル・タックスを呼びかけ」(ロイター通信 注1)、「より貧しい国々でのグリーン・エネルギーのためにグローバルな炭素税を支持」(FT)と報じました。

実は、ルト大統領等は気候危機にあたっては南も北もない、援助よりは投資が必要ということで、炭素クレジットなどの市場ベースの投資を強調していましたが、「最終宣言では主要汚染者と世界的金融機関がより多くの資源を投入して貧困国を支援し、手ごろな金利で借り入れを容易にするよう求める要求が最も強調された」(ロイター通信ほか)形になりました。

その上で、ナイロビ宣言では、世界の指導者に対して「化石燃料取引、海上輸送、航空に対する炭素税を含むグローバル炭素税制の提案に賛同し、さらにグローバル金融取引税によって強化される可能性がある」と促しました。

このような宣言内容がアフリカ諸国の総意となり、来る11月のUAEでのCOP28に提案されていくことになります。

2)気候「損失と損害(L&D)」基金での議論>多様な資金源を

COP28での主要議題のひとつがL&D基金の具体的な内容(誰が払い誰が受取る等の制度設計、資金源など)を取り決めることで、そのために移行委員会で鋭意議論しています。資金源の議論として、一部からグローバル・タックスの提案がなされています。フランスは次のように提案しています(南太平洋の島国バヌアツも同じような革新的な資金調達案を提案)

革新的な資金源を含む多様な資金源を受け入れることができるよう、基金を設計すべきである。…補助金ベースの資金調達から、ブレンデッド・ファイナンス・メカニズムや、グローバル化の流れに対する革新的な課税手段、例えば、航空・海上輸送や化石燃料の貿易・生産に対する課税、金融取引税、国際カーボンプライシングなどによる資金調達が考えられる」(注2)

途上国・脆弱国の当面のL&D基金の要求として1000億ドル/年を挙げていますが、これまで先進国は長期気候資金1000億ドルを拠出しなければなりませんので(2025年まで)、併せて2000億ドルになりますから、これはこれまでのような資金拠出ではまったく間に合わず、思い切った革新的な資金調達方法、すなわち金融取引税など国際連帯税実施が必要となってくるのではないでしょうか。

3)欧州連合−欧州議会>913日欧州委委員長の一般教書演説に注目を

欧州はコロナ復興基金を含む20212027年中期予算を実施中ですが、ウクライナ戦争やインフレ、そして復興基金の債券の金利上昇等で、予算不足とになり修正をすることになりました。そこで欧州議会は独自財源として金融取引税の(前倒し)を軸に暗号資産への課税や法人税の一部なども含む決議案を採択しました。ところが、欧州委員会は6月に金融取引税を捨象し、国内の企業の利益分を加盟国から拠出させるという、(企業が拠出するのではない変則的?)法人税の一部拠出という修正案を提案しました。

こうした状況の中、ポルトガル、フランス、ドイツのEU担当大臣(&副大臣)がEU予算は課題に対してあまりにも少ないということで、未来のための税金や賦課金による「独自の資源」を備えた、より連邦的なEUを求める共同見解をメディアに発表しています。当然そこでは金融取引税も有力な選択肢となっています(注3)

913日に欧州議会でフォン・デア・ライエン欧州委委員長が一般教書演説を行う予定で、ここでの発言が注目されます(ただし、彼女はいつも金融取引への課税について話すことを拒否しているとのこと)。

4)G20ニューデリー・サミット>シンクタンクGFTTを提案

サミットは10日に閉幕しましたが、首脳宣言をざっと読むと金融取引税等のグローバルタックスの表現はありません(一部革新的資金源の記述あり)。エンゲージメントグループのシンクタンクグループが金融取引税を提案していましたが残念です。Think20 India Communiquéは最初の「マクロ経済、貿易そして暮らし」の章で次のように述べています。

G20は、課税ベースを合理化するための政策を検討し、(不平等の削減と消費型経済の成長という)…文脈において、国際金融取引税(FTT)の役割も、総合的な費用便益分析を通じて評価されるべきである。FTTを使用する場合は、金融取引への悪影響を最小限に抑え、税収増につながるように設計すべきでる」(注4)。

(注1)

African leaders call for new global taxes to fund climate change action

(注2)

Submission from France to the Transisitonnal committee

(注3)

A European Union fit for the future

France, Germany, Portugal pitch EU levies and Ukraine ‘Marshall plan’

(注4)Communiqué 

※ポスターは、アフリカ気候サミットのポスター

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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2023年08月23日

G20サミット:ボストン大学グローバル開発政策センターが国際金融取引税を提案

G20インドのロゴ.JPG

G20インドサミットのロゴ

コロナ・パンデミックや気候・食料危機、そして債務危機等というポリクライシスにあって、途上国への貧困・気候に関する資金援助は膨大なものになっており、99-10日インドのニューデリーで開催されるG20サミットでも新興・途上国への支援が主要課題の一つとなります(714付ブルームバーグ)。

この支援につき、インドで著名なエコノミストのナゲシュ・クマール(Nagesh Kumar)とボストン大学 Global Development Policy Center所長のケビン・P・ギャラガー(Kevin P. Gallagher)の両氏が、『G20における国際金融取引税(IFTT)議題の復活』と題した政策ブリーフで展開しています。これがG20のエンゲージグループのT20(シンクタンク20)に提出されました(*)。

この政策ブリーフの概要がセンターのWebサイトに掲載されていますので紹介します。政策ブリーフについては後ほど報告します。 


G20における国際金融取引税議題の復活**

世界的な危機の中で、実質的な気候変動対策と貧困緩和の必要性がより緊急性を増すなか、途上国も先進国も、これらの問題を和らげるために設計されたメカニズムを果たすことができていません。国連の2030年持続可能な開発目標(SDGs)の達成と気候変動対策は、グリーンな移行を確実にし、コミュニティを貧困から救い出すために必要ですが、それらを達成するには驚くべき額の外部資金が必要であり、国際社会はその支払いが困難であると感じています。厳しい予算と政府開発援助(ODA)の不足を考慮すると、気候変動対策とSDGsのために新しく革新的な資金源が必要です。

Nagesh Kumar氏とKevin P. Gallagher氏は、新しいThink20(T20)政策ブリーフの中で、G20G20)がSDGs達成と気候変動対策のための新たな収入源として、外国為替取引に対する少額の課税からなる国際金融取引税(IFTT)を導入することを提案しています。

著者らの試算によれば、非常にわずかなレートであっても、IFTT ODA の年間フローの 3.5 倍に相当する年間収益を生み出す可能性がある、としています。IFTTは、外国為替投機筋を抑制しながら、途上国のSDGsや気候変動対策目標を支援できる新たな恒久的な収入源として機能する可能性があります。その結果、IFTT は金融市場のボラティリティ(価格変動率)を抑制し、有害な投機とその後の好不況サイクルを緩和する機能を生み出します。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック、ロシアのウクライナ戦争によって引き起こされたインフレスパイラル、債務危機の複合的な影響により、先進国と途上国の両方で予算が逼迫している。さらに、無制限の外国為替取引は市場のボラティリティを助長し、国際金融システムを脅かしています。クマール氏とギャラガー氏は、IFTTには気候変動対策とSDGsを達成するための財源を創出しながらボラティリティを抑制する独自の能力があり、G20から生まれる画期的な多国間イニシアチブとなる可能性があると主張しています。

Nagesh Kumarナゲシュ・クマールは、ボストン大学グローバル開発政策センターのグローバル経済ガバナンス・イニシアチブの非居住上級研究員。また、ニューデリーに本拠を置く公的資金による政策シンクタンクである産業開発研究所(ISID)の所長兼最高経営責任者。

Kevin P. Gallagherケビン P. ギャラガー博士は、ボストン大学グローバル開発政策センター所長。また、ボストン大学フレデリック S. パーディー グローバル スタディーズ スクールのグローバル開発政策教授。

*Reviving the International Financial Transactions Tax (IFTT) Agenda for the G20

  https://t20ind.org/research/reviving-the-iftt-agenda-for-the-g20/ 

**https://www.bu.edu/gdp/2023/06/13/reviving-the-international-financial-transactions-tax-iftt-agenda-for-the-g20/?utm_content=259869561&utm_medium=social&utm_source=twitter&hss_channel=tw-905477617775771654

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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2023年08月21日

国際連帯税要望の復活を!林外務大臣への手紙

8月末は、24年度予算の概算要求が各省庁から上がるとともに、税制改正要望も提出する時期です。従いまして、国際連帯税についても実現に至るには、まず外務省から新設要望として提出してもらうことが必要となります(閣法となる場合)。


こうしたタイムテーブルを射程に入れ、私たちは昨年12月に林大臣にお会いするとともに、5G7大阪サミットに際し要望書を提出し、8月上旬に「令和6年度税制改正での国際連帯税要望の復活をお願いします」という手紙を出しました。現在この手紙をもとに外務省担当者との話し合いを進めつつあるところです。


さて、この手紙の要望は次の2点です。


1)日本外務省は令和6年度(2024年度)税制改正にあたり国際連帯税要望を復活させること

2)国際課税方式による開発資金調達方法について有識者会議を設置すること


外務省は2009年より2019年まで国際連帯税の新設要望を出していましたが、2020年コロナ・パンデミックを機に要望提出をやめてしまいました。19年に外務省内に作られた「SDGs達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」も当初国際課税について議論することだったのが、コロナ・パンデミックを機に民間資金の活用の方へと捻じ曲げられた、という経緯があります。


要は、債務危機を含め危機に陥っている貧困国・脆弱国を最大限支援するための開発・気候資金調達を国内外で図るという意思を日本政府が持つか、どうかだと思います。かつて「国際連帯税創設を求める議員連盟」の会長も務めていた林芳正外務大臣は最大限支援のために尽力していただければと願うところです。


◎林外務大臣への手紙は、こちらからお読みください。


(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)




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2023年08月15日

ケニア・ルト大統領、新しい気候・開発資金創設に向けグリーン・バンクを提唱

ルトとマクロン両大統領.JPG

6月のパリでの新グローバル金融協定に関するサミット(以下、パリ・サミット)で気候・開発資金調達に向け「グリーン・バンク」創設を提案するなど、一躍名を挙げたのがケニアのウィリアム・ルト大統領(以下、大統領)です。同大統領がサミット終了後フィナンシャル・タイムズ(FT)にロングインタビューを受け、そのもようが810日付電子版に掲載されましたので、紹介します。


インタビューのタイトルは、「ケニアのウィリアム・ルト大統領:“私たちは負債から逃げているわけではない”」というものですが、以下要点を列挙してみます。


1)大統領は「今急務なのは、緊急流動性、債務救済―多くの国は借金をする余地がないため―、そして気候変動『資金調達』」と言っていまして、多くのグローバル・サウス(以下、GS)の声を代表していました。つまり、債務救済や開発資金援助のためのIMFSDRの利用と世界銀行・多国間開発銀行改革という点ではそうですが、ただ「気候変動に関するグローバルな金融システム」の創設という点で他のGSの指導者とは違っています。


2)そのグローバルな金融システムとは、IMFや世界銀行という既存の金融アーキテクチャーとは違う「(グローバル)グリーン・バンク」の創設です。前者は、「国益と株主の利益の人質」になっており気候変動問題に対処できないと述べています(株主とは主要先進国ですね)。では、気候変動に対処するにはどうするか? どの国にも株主にも左右されない新しい資金とそのメカニズムが必要で、「すでに提案されている『税金と課徴金(tax and levy)』構想の中に見出すことができる」と述べています。


3)その『税金と課徴金』構想と言いますと、それは既にいろいろ提案されていたものであり、具体的には「炭素税、グローバル金融取引税、海運税、航空[賦課金]等と述べています。そしてこれらの税から「1.5兆ドルから2兆ドルを調達し…[その資金があれば] 2050 年までにネットゼロへの道を歩むことができます」と述べています。


4)FTインタビュアーはこの構想を支持する西側諸国はあるのかとの問いに対し、大統領はIMFが炭素税を提案していることや欧州議会が金融取引税を提案していること、またCOP28のチームとは話し合っていること等を挙げ、しかし「彼ら(西側諸国)は世界銀行とIMFの株主です。彼らは権力を支配し続けたいと考えています。だから戦いになるでしょうが、私たちにはその準備ができています(バックにはアフリカ大陸全体が存在している)」と言い切っています。


5)94日からはじまる(6日まで)第1回アフリカ気候サミット(*)で、先のパリ・サミットで合意された「国際課税を通じた新たな財源の可能性を検討するタスクフォース」が開催されることになりますが、そこでの議論がその戦いの第1ラウンドとなるはずです。こうした財源の創設につき、本来なら、フランスがもともと組織していた「開発のための資金調達に関するリーディング・グループ」(2006年フランスの提案で創設)で議論すべきでした。2019年には日本政府が同グループの議長国を務めていたのです。しかし、マクロン大統領が、歴代のシラク、サルコジ、オランド政権下で続いていた同グループを結果的に潰してしまったのです。


6)とはいえ、ケニアの国内情勢を見ますと、東アフリカの大干ばつの影響(350万人が飢餓に直面し250万頭の家畜を喪失)や公的債務も700億ドルに上るなど厳しい状況があります。そもそも「例えばフランスはGDPに占める歳入の割合が45%です。ケニアは14%以下です」とルト氏は述べていますが、これだけ税収が少ないと、十分に教育や保健医療等へ予算配分を行うことはできないでしょう。それで昨年9月に大統領となったルト氏は補助金の廃止や増税(歳入割合を18%に増やしたい)を行っているようですが、それが国民の反発を買っているようです


7)決して経済的に余裕があるとは言えないケニアの大統領が世界に向かって気候と開発のための新しい資金の創設を呼びかけています。一方、ケニアよりははるかに余裕があり、上記リーディング・グループという組織を持っていたフランス・マクロン大統領がルト大統領の提案に対し、comme ci, comme ça(まあ、まあ?)と言ってお茶を濁している姿勢を見ていますと、失望せざるを得ません。とはいえ、アフリカ気候サミットの成功を祈るとともに、日本政府に対して国際連帯税による途上国支援を訴えていきたいと思っています。


*)アフリカ気候サミットのWebサイト: https://africaclimatesummit.org/ 



ケニアのウィリアム・ルト大統領:「私たちは負債から逃げているわけではない」

Kenya’s William Ruto: ‘We are not running away from our debt’


東アフリカの国家大統領、世界的なグリーンバンクを呼びかけ、返済一時停止が開発資金の助けになると語る


ケニアのウィリアム・ルト大統領は昨年9月の就任以来、迫り来る債務不履行リスクに対処し、中国を含む債権者への高額な月々の支払いを抑制するため、国の債務削減に注力してきた。


同時に、ケニアは気温の上昇と降雨量の減少の影響に取り組んでおり、今年初めにアフリカの角で発生した壊滅的な干ばつは、気候変動によってその可能性が100倍高まったと科学者たちは指摘している。


途上国からの債務返済は、気候変動で最も大きな打撃を受けている国々への支援と並行して行われなければならないというルト氏の主張は、国際フォーラムで定着しており、世界銀行とIMFの両者は、これらの共同課題に対処するために資金を解放するよう圧力を受けている。


世界金融システムの改革について話し合うために6月に世界の首脳がパリで会合する中、モラル・マネー記者のケンザ・ブライアン氏と気候特派員のアトラクタ・ムーニー氏はルト氏に話を聞いた。


以下、インタビューの一部は、http://isl-forum.jp/archives/3957 をお読みください。 


※写真は、パリ・サミットでのルト大統領とマクロン大統領(FT電子版より)


(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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2023年07月27日

格差是正に向け、米国でも52団体が金融取引税を要求>上・下両院議員への要請

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この間6月パリで開催された「新グローバル金融協定のためのサミット」を前後して、主に欧州での格差=不平等拡大に対する運動を紹介してきましたが、今回は米国での取り組みにつき、NGOパブリック・シチズン(1971年弁護士で著名な社会活動家のラルフ・ネーダーが設立した老舗のNGO)から最新情報が寄せられたので、紹介します。

◎要旨:

・民主党の2議員が「2023年ウォール街税法(金融取引税)」案を提案しましたが、これへの共同提案者になっていただくための上・下両院議員への要請文で、

・内容は、株式、債券またはデリバティブの購入に0.1%課税し、その税収(10年間で推定7,520億ドルの収入)を、教育・医療・保育・住宅・気候危機への対応など社会課題への投資に充てる


52団体がウォール街税法を支持

52 Groups Endorse the Wall Street Tax Act

https://www.citizen.org/article/52-groups-endorse-the-wall-street-tax-act/

2023726

親愛なる上院議員および下院議員のみなさま

下記に署名した52団体を代表して、私たちはブライアン・シャッツ上院議員(民主党、ハワイ州)とヴァル・ホイル下院議員(民主党、オレゴン州)が提案した2023年ウォール街税法への共同提案を求める書簡を送ります。所得格差に対処するために支出を拡大すべきときに、壊滅的なデフォルトを回避するための最近の債務制限合意に、栄養支援から医療、環境保護、ヘッドスタート(注:就学援助のためのプログラム)などに至る重要なプログラムのインフレ調整後の削減が含まれていたことは良心的ではありません。そしてアメリカの他の差し迫った問題もあります。わが国は、弱者を助けるために歳出を削減するのではなく、企業やウォール街の大浪費家を含む企業や超富裕層への増税によって歳入を増やすべきだったのです。


米国で金融取引税(FTT)とも呼ばれるウォール街税を復活させることは、ウォール街に公平な税負担を求めるための重要な一歩となります。株式、債券、またはデリバティブの購入に0.1%、つまり 100 ドルあたり 10 セントという非常に少額の税金を課すことにより、ウォール街税法は10年間で推定 7,520 億ドルの収入を得ることができます [1 ] 。教育、医療、保育、住宅、気候危機への対応など、勤労者家庭の優先事項の投資に充てることができます。


アメリカにおける株式所有の分布から、この法案はアメリカで蔓延する経済的不平等に対処するための重要な一歩となるでしょう。アメリカ国民の大部分は、たとえ退職金口座を通じて間接的にであっても[2] 、株式市場の富をまったく所有していないため、FTTには何の負担もかからず、重要な政府サービスへの投資資金として利用できるより大きな収入から恩恵を受けることになるでしょう。社会の最も裕福な人々が税の大部分を支払い、ウォール街税の収入の4分の3は上位20%の所得者が、40%は上位1%の所得者が負担することになる。税収のほぼ 4 分の 1 (23.5%) は、私たちの中で最も裕福な人々、つまり所得上位 0.1%の所得者だけが負担することになります。[3]


制度的な不公平のため、残念なことに、有色人種のコミュニティでは経済格差がさらに顕著になっています。[4]これに関連して、黒人家族とラテン系家族の金融資産所有率は、収入を調整した場合でもはるかに低いです。[5]これは、税発生率のより大きな割合を白人世帯が支払うことを意味し、再分配の役割を果たす可能性があります。


この法案はまた、もう一つの明白な不均衡を是正することになるでしょう。一般庶民はあらゆる種類の商品やサービスに対して売上税を支払っているが、現在、ウォール街の関係者が取引を行う際にはそのような税金は適用されない。[6]さらに、金融会社は近年減税を受けており、銀行は2017年のトランプ・共和党による減税法案から最大級の恩恵を受けており[7]、その額は1兆9000億ドルを超えており、これが債務上限騒動を悪化させる一因となっています。


ウォール街は非常に不正確なメッセージキャンペーンを展開していますが、[8]退職金貯蓄者は税金による不利益はなく、利益を得る可能性が高い。なぜなら、FTTを導入することで解約率が減り、税金のコストが完全に相殺される可能性があるからです。投資家がすでに支払っている手数料やその他の料金も同時に削減されることになります。[9]その仮定に頼らなくても、典型的な退職金口座を持つ中所得のアメリカ人は、0.1% FTT に対して平均で月額 1 ドル (年間 13 ドル) をわずかに上回る額を支払うことになります。[10]また、年金基金は金融取引税が課される海外市場にすでに多額の投資が行われているため、この税による悪影響を受けることはありません。[11]政府は社会保障、メディケア、高齢者向けの栄養補助といった重要な退職プログラムを強化、さらには拡大するための追加財源を得ることができるため、退職者は税収の受益者となる可能性が高いと言えます。


この提案のもう1つの利点は、金融セクターのリスクとボラティリティを軽減し、ウォール街の焦点を投機から、メインストリートの企業、従業員、勤労者家族を支援する長期投資へと方向転換できることです。調査によると、高頻度取引による「レイテンシー裁定取引」は、世界中の市場のトレーダーに50億ドルの「税金」を課していることが分かっています。[12]この法案で提案されている 10 ベーシスポイント課税のような非常に少額の金融取引税であっても、平均的なアメリカ人への影響は無視できる程度でありながら、高頻度取引を事実上排除することになるでしょう。


FTT は新しいものではありません。米国は 1914 年から 1965 年まで金融取引税をか導入していましたが、大恐慌による経済危機に対応して増税しました。[13]現在、フランス、香港、インド、韓国、スイス、英国などの経済大国や先進資本市場を含む 30か国以上が FTT を導入しています。[14]バークシャー・ハサウェイCEOのウォーレン・バフェットを含む著名なアメリカ人投資家、元 TIAA-CREFコーポレートガバナンス責任者であるCalSTRS CEOのジャック・イーネス氏、ジョン・ウィルコックス氏、ゴールドマン・サックスの元会長ジョン・ホワイトヘッド氏は取引に対する物品税を支持した。[15]元労働長官ロバート・ライヒ[16]。元米国財務長官ロバート・ルービン、[17]元財務長官顧問のアントニオ・ワイス氏[18]も金融取引税を支持しています。


ウォール街税法は、経済的不平等を緩和し、投資を長期投資に再集中させるための重要な一歩を踏み出すと同時に、我が国の差し迫ったニーズに応えて多額の歳入を確保するためのきわめて進歩的な方法です。ぜひこの良識ある法案に共同提案してくださいますよう強くお願いいたします。


敬具、


署名した団体の一覧はこちら:

Affordable Homeownership Foundation Inc.

AFL-CIO

American-Arab Anti-Discrimination Committee (ADC)

American Family Voices

American Federation of State, County and Municipal Employees (AFSCME)

American Federation of Teachers

Americans for Democratic Action (ADA)

Americans for Financial Reform

Americans for Tax Fairness

Blue Future

Center for Popular Democracy

Chicago Political Economy Group

Child Labor Coalition

Citizens for Tax Justice

Coalition on Human Needs

Communications Workers of America

Congregation of Our Lady of Charity of the Good Shepherd, U.S. Provinces

Congregation of Sisters of St. Agnes

Consumer Action

CorpGov.net

Demand Progress

Food & Water Watch

Greenpeace USA

Institute on Taxation and Economic Policy

International Federation of Professional and Technical Engineers (IFPTE)

Latino Farmers & Ranchers International, Inc.

Main Street Alliance

Media Voices for Children

Medical Mission Sisters, Justice Office

MomsRising

National Advocacy Center of the Sisters of the Good Shepherd

National Association of Consumer Advocates

National Consumers League

National Education Association (NEA)

NETWORK Lobby for Catholic Social Justice

Our Revolution

Oxfam America

Poverty Project at the Institute for Policy Studies

Progressive Democrats of America

Public Citizen

Public Justice Center

Revolving Door Project

RootsAction.org

Take on Wall Street

UAW

Unitarian Universalists for Social Justice

UNITE HERE

United Church of Christ, Justice and Local Church Ministries

United for Respect

United Steelworkers International Union (USW)

Unrig Our Economy 


[1]議会予算局、赤字削減のオプション: 2021年から2030年まで、86 (2020年12月)、https://bit.ly/2MJu4Cp.

[2] Jeffrey M. Jones、What Percentage of Americans Own Stock?、 Gallup (2023 年 5 月 24 日)  https://tinyurl.com/mrykwbam

[3] Aaron Klein、What Is a Financial Transaction Tax?、ブルッキングス研究所、(2020 年 3 月 27 日) https://brook.gs/3o7ygbC.

[4] クレッグ・スティーブン・ブラウン、米国の人種的富の格差の歴史を調べると、これらの格差の解消に向けた進歩が停滞していることが示されている、ワシントン公平成長センター(2023年2月24日)https://tinyurl.com/yckx27pf.

[5]米国財務省、経済安全保障における人種の違い: 非住宅資産 (2023 年 1 月 10 日) https://tinyurl.com/29vucb6a.

[6]証券取引委員会によって少額の手数料が課されますが、その手数料は現在 0.002% に設定されています。

https://www.sec.gov/news/press-release/2023-15

[7] JUST Capital、法人税改革に関する JUST Capital ランキング、https://bit.ly/3sHusSh

[8]テイラー・リンカーン、一般市民、警告: 金融取引税を攻撃するために業界がデータをどのように操作したか (2019 年 10 月 10 日) https://bit.ly/394v5xe.

[9]テイラー・リンカーン、公共市民、有益な効果のある累進税 (2019 年 9 月 16 日) https://bit.ly/2Y5yohk.

[10] 同上。

[11] Dean Baker、経済政策研究センター、金融取引税: 年金基金に影響を与えないウォール街の課税 (2020 年 10 月 30 日) https://bit.ly/3a8PMYr.

[12] Matteo Aquilina 他、金融行動監視機構、高頻度取引「軍拡競争」の定量化: シンプルな新しい方法論と推定 (2020 年 1 月) https://tinyurl.com/b95cavk5.

[13] Antonio F. Weiss および Laura Kawano、ブルッキングス研究所、金融取引への課税に関する提案 (2020 年 1 月 28 日) https://brook.gs/2KC9CCp.

[14] Gunther Capelle-Blancard、ソルボンヌ経済センター、金融取引の課税: 世界の税収の推定 (2023 年 5 月 10 日) https://tinyurl.com/yswhhtu2

[15]短期主義の克服: 投資と事業管理へのより責任あるアプローチの呼びかけ、アスペン研究所 (2009 年 9 月 9 日) https://bit.ly/3sLKn1D.

[16] Why a Tax on Wall Street Trades is an Even Better Idea Than You Know、robertreich.org (2016 年 8 月 10 日) https://bit.ly/2O6TJp4.

[17]ロバート E. ルービン、「経済を活気づける」、ニューヨーク・タイムズ紙 (2020 年 4 月 17 日) https://nyti.ms/361RedO.

[18] Antonio F. Weiss および Laura Kawano、ブルッキングス研究所、金融取引への課税に関する提案 (2020 年 1 月 28 日) https://brook.gs/2KC9CCp.


※写真はNY証券取引所


(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)



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