2017年09月17日

観光資源のためだけの出国税ではなく国際貢献と日本文化も加味する出国税を

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観光庁(国土交通省)は15日、国内の地方の観光施設整備などに使う財源を確保するための有識者検討委員会を開催しました。検討委員会には、次の3案が提示されたようです。「▽出入国者(出国税など)▽航空機利用者(航空旅客税など)▽宿泊施設の利用者(宿泊税など)」(毎日新聞)。が、観光庁側の意向としては、この間の観光庁長官発言にもあるように出国税にしたいようです。

が、問題のひとつとして、出国税を日本人からも徴収するのかどうかにあります。というのは、この税の受益者は訪日外国人観光客(以下、訪日客)であり、国際線利用の出国する日本人には恩恵が及びませんので、訪日客に対して課税するのが「受益と負担」の関係から言ってもっとも自然です。ところが、WTO・サービス貿易などでの「内外無差別原則」があるため、そのことは違反になってしまいます(つまり、出国日本人にも課税しなければならなくなります)。すると出国日本人に同税を理解してもらうことはやや厳しいと言わなければなりませんね。

ついでに、「受益と負担」の関係でいえば、訪日客ではないビジネス客も受益しないまま負担だけになってしまいます(数は圧倒的に少ないとはいえ)。

むしろ「宿泊税」や検討会では出ていないようですが「観光税」「駐車税」などの方がぴったり目的に適合すると思います。

このように「受益と負担」という観点から言えば、観光資源の財源確保のための出国税では課税根拠がやや弱いと言えます。従って、出国税の性格を、本来消費税が免税されているサービス(国際線利用)に税を課すということを勘案し、グローバルな課題に対処するための税として制度設計し直したらいかがでしょうか。つまり連帯税的要素を加えて、「国際貢献と日本文化・観光に関する出国税」(仮称)とすることです。

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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2017年09月09日

18年度税制改正要望での「出国税」と「航空券連帯税」

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(1)国交省の18年度税制改正(新設)にいわゆる「出国税」を要望

先に外務省が18年度税制改正(新設)で引き続き「国際連帯(貢献)税」を要望したことをお知らせしましたが、国土交通省は『次世代の観光立国実現のための財源の検討』というきわめて漠然とした税制を要望しています(下記参照)。この財源ですが、マスコミでも報道されていますように、いわゆる「出国税」であることは間違いありません。

「出国税」とすれば、日本から飛行機や船舶で出国する人たちの運賃(航空券や船舶券)に税を課すことになります。飛行機ですと国際線を利用する人が税を払うことになりますが、この仕組みは航空券連帯税と同じです。

(2)国交省は航空券連帯税に反対していながら、出国税を要望するのはおかしくないか?

国交省は航空業界とともに、この間ずっと航空券連帯税に反対してきました。その理由は、「観光立国として頑張ろうとしているのに、航空券に税がかかると観光客が減少してしまう」というものでした。ところが、出国税もやはり航空券に税がかかることになりますので、本来なら反対となるはずですが。航空券連帯税だと観光客は減るが、出国税だと観光客は減らないとでもいうのでしょうか。まったくのご都合主義といえるでしょう。

(3)出国税は誰に課税するのか? 受益と負担の関係は?

この国交省の要望は、漠としていて具体的な税目も課税方法も税収もいっさい書かれていませんが、メディア報道等によれば、航空機や船で出国する旅行者をターゲットにした出国税を想定しています。

そこでまず課税対象の問題が起きますが、要望では「観光立国の受益者の負担による」と書かれています。しかし、「観光立国の受益者」とは誰なのか? よく分からない定義ですが、報道などを読むとどうやら訪日する外国人観光客のようです。したがって、課税対象は外国人観光客となります。

するといろいろな問題が起きます。ひとつは、出国日本人の扱いです。受益者定義からすれば、出国日本人は課税対象にはならないはずですが、@徴税システムが煩雑になる、AWTOサービス貿易に違反する、という問題が起きそうです。@例えば同じJALの飛行機に乗っても、税を払う人(外国人)と払わない人(日本人)が出てきますので、JAL側は分けて税務当局に報告・納入しなければなりません。また、AはWTO違反「運送サービスの越境取引での差別」の問題(注)につながってくると思います。したがって、外国(の政府や航空会社・旅行者)から相当反発されるのではないでしょうか。

(注)「サービスの貿易」とは何か 

実際、出国税のある香港やオーストラリアでは「課税対象:香港(オーストラリア)から出発する旅客」となっており、外国人と内国人を区別していません。

さらに、要望内容では「受益と負担の適正なあり方…を勘案しつつ」と言っていますが、次のようなフリーライダーが現われてきます。つまり、負担しないが受益する人たちです。国内の日本人旅行者や日本人相手の国内旅行業者、それと土産物屋やホテル業など観光地の地元、などです。

(4)観光資源だけでなく、グローバルな課題を包含した「出国税」を

国交省が出国税を要望するということは、これまで「航空券税のような税制は観光立国を目指すという政策に逆行する、観光客が減少する」と言ってきたことを翻した、ということを意味します。しかし。観光資源の財政のための出国税というだけでは、上記のような受益と負担問題もあり、きわめて課税根拠が弱いと言えます。

本来、出国税であろうが航空券連帯税であろうが、日本政府の課税権が及ばない(したがって、一般消費税が課せられない)国際線航空へ課税することになり、その行為は日本政府が超国家の肩代わりとして行うことになるという性格を持ちます。それ故に、税収も日本国内の政策の財源にするのではなく、超国家的(グローバルな)課題の財源にすべき、というのが「航空運賃への国際人道税」を提唱した金子宏・東京大学名誉教授でした(注)。

(注)「人道支援の税制創設を 国際運輸に定率で」(日本経済新聞) 

実際、グローバルな課題は、貧困・飢餓、感染症、テロや難民、気候変動等枚挙にいとまがなく、したがってその財源もいくらあってもありすぎることはありません(というか、圧倒的に不足している)。

以上から、出国税もグローバルな課題の財源とすることも内包しつつ(とくに航空網など国際交通の発達は感染症のパンデミック的拡大の危険性がありそれへの対処が求められている)、観光資源のための財源としても考慮する、ということも考えられるのではないでしょうか。これを一言でいえば、「国際貢献と日本文化・観光に関する出国税」の創出となりましょうか。


平成30年度税制改正要望(国土交通省)】

◎制度名:次世代の観光立国実現のための財源の検討 (新設)

◎要望の内容:
増加する観光需要に対して高次元で観光施策を実行するために必要となる国の財源の確保策について、受益と負担の適正なあり方や訪日旅行需要への影響を勘案しつつ、諸外国の取組も参考に検討を行う。

以下、省略

(報告:田中徹二・国際連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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2017年09月01日

18年度税制改正要望>外務省、9年連続「国際連帯税」を新設要望

2018年度(平成30年度)税制改正要望が8月31日締め切られましたが、外務省は9年連続して「国際連帯税(国際貢献税)」を新設要望しました(下記、外務省要望事項参照)。今回の特徴としては、持続可能な開発目標(SDGs)の推進という文脈の中から革新的資金メカニズムの必要が語られ、国際連帯税(国際貢献税)を要望するというもので、これまでの要望内容に太い線が入ったということで評価することができます。

しかし、問題は国際連帯税の中のどの税制を要求するか、です。が、外務省は事例として航空券連帯税と金融取引税を挙げているだけで、この税を新設したいという具体性に欠けており、その分迫力不足であることは否めません。

ともあれ、私たちは具体的に航空券連帯税の実現を第一義に(次のステップは金融取引税)、次の舞台は与党税制調査会での議論の場となりますので、ここをターゲットにロビングを強化していきます。同時に、国際連帯税創設を求める議員連盟とともに、官邸に向けての申し入れ等を行っていきたいと考えています。どうぞご支援、ご協力をお願いいたします。

◆外務省 平成 30年度税制改正 要望事項
[制度名]:国際協力を使途とする資金を調達するための税制度の新設
[税 目]:国際連帯税(国際貢献税)
[要望内容]:…前・中略… 以上を踏まえて,以下のとおり要望する。@とAは省略。

B 課税方法として,我が国としてどのような方式を導入することが適当かについては,【持続可能な開発目標(SDGs)の推進等に係る我が国の取組や開発アジェンダを巡る国際潮流及び国際連帯税(国際貢献税に係る】国際的な取組の進展状況を踏まえつつ検討する。
 ※【 】内は、昨年度の要望書に加えられた文章

外務省「平成 30年度税制改正 要望事項」の全文

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)


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2017年08月04日

新外務大臣に望む:貧しい国・貧しい人々に寄り添う地球規模外交を

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第3次安倍改造内閣で、どの政治評論家も予想していなかった河野太郎衆議院議員が外務大臣になりました。河野議員と言えば、かつてはODAのあり方について、原子力発電問題について、行政改革について、そして最近の自衛隊の日報問題について、歯に衣を着せない発言を多く行ってきました。

新大臣へ望むのは、日米同盟も大事ですが、狭い(日本の)国益に捉われることなく、貧しい国・貧しい人々に寄り添う地球規模外交をぜひ推進していただきたい、ということです。河野議員であればきっと実行できるものと期待しております。

ところで、かつて河野議員が自民党の国際局長だったころ(と思いますが)、何と!以下のように開発資金創出のための通貨取引税(金融取引税)に言及するなど、国際連帯税的な考え方を持っていたのです。新大臣になられてもこの考え方を忘れずに外交を進めてもらいたいものです。


●河野太郎ブログ「ごまめの歯ぎしり」
   『疲れた日本』(2010.07.18)

『日本の自民党の河野太郎です。日本国の政府を代表していませんし、我が党の主流派の意見ではないかもしれません。しかし、国民の大部分の意見を代表していると思います。

みなさん、日本は援助疲れしています。援助に対する国民世論は好意的ではありません。なぜならばこれまでの日本の援助に関する意思決定に透明性も説明責任もないからです。

<中略>

そもそも国連開発目標を達成するために、どこかの国のODA予算に頼っているという現状がおかしいのです。そろそろ真剣に、本当に真剣に、貧困撲滅や開発のために国際社会が自ら歳入を得る方策を検討し、実施に向けて動くべきです。

例えば、巨額なお金が動いている通貨取引に、国際的に課税するというのはどうでしょうか。1%の百分の一や千分の一というわずかな税率で、国連開発目標実現のために必要な資金を得ることができます。

そろそろどこかの国の援助に頼るのではなく、国際社会が必要なお金を得るためにはどうしたらよいか、現実的に考え、行動するべき時が来たと思います。

ご静聴ありがとうございます。

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)
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2017年07月14日

マクロン大統領>FTT(金融取引税)導入「最後までやり遂げる」、しかし…

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マクロン仏大統領は、欧州(10カ国)FTTにつき、その導入計画を「最後までやり遂げる」と言明した、とロイター通信は報じています。

一方で、10日予定されていた10カ国の財務相会合は年末まで延期されたようです。背景として、ドイツの総選挙が9月末に行われ、本格的に政府が形成されるのは11月になり、それからでないと物事が進まないというものです。しかし、実際のところ、ドイツならびにフランス政府がロンドン・シティから金融機関を誘致しようとしてFTT推進を躊躇しているというのが本音でしょう。 

また、フランスは7月7日フィリップ首相が「フランス独自FTT」の拡大を取りやめると記者発表しました。この結果、フランスのODA(政府開発援助)の22%がFTTによって資金を得ていますが、このままではODAの対GNI比のさらなる低下が懸念されています。 

ともあれ、多分に腰が引けた内容ですが、マクロン大統領の「最後までやり遂げる」言明は以下の通りです。大統領の言動に注目していきましょう。


【ロイター】金融取引税、意味と実効性ある限り導入推進=フランス大統領
2017年 07月 14日
[パリ 13日 ロイター] - フランスのマクロン大統領は、13日付の仏紙ウエスト・フランスに掲載されたインタビュー記事で、ユーロ圏10カ国が基本合意している金融取引税(FTT)について、意味と実効性がある限り導入を推進する考えを表明した。

FTT導入はフランスとドイツが主導。ただ、対象となる金融商品や税率をめぐり各国の意見の隔たりが大きく、2011年以降、協議は難航している。

マクロン氏は、FTT導入を「最後までやり遂げる」と言明。欧州議会の一部議員やNGOから批判の声が上がるが、「この件では一切引き下がらない」と述べた。

ただ、EU離脱後の英国がEU域内の金融市場へのアクセスを確保するかどうかで状況は変わってくると指摘。FTTが適用されない英国に金融機関が拠点を移すことが想定されると説明した。


《参考》
【Bloomberg】EU Financial Transactions Tax Talks Kicked to End 2017(17/07/10)

【EURACTIV】French backtracking on FTT undermines development commitments(17/07/11)

(報告:田中徹二グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)
posted by resultsjp at 23:13| Comment(5) | 国際連帯税の推進