2020年03月30日

人類生存の危機的事態には地球利用代としての国際連帯税を

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「途上国で数百万人が感染すればウイルスが突然変異するリスクがあり、ワクチンが開発されても効かなくなる」(2020326日 国連グテーレス事務総長)

「もし1千万人以上の人々が次の数十年で亡くなるような災害があるとすれば、戦争よりも感染性の高いウイルスが原因の可能性が大きい」(2015 ビル・ゲイツ)

●新興コロナウイルス肺炎、パンデミック 

新興コロナウイルス肺炎(以下、新型ウイルスと略)の感染者と死者はうなぎ上りとなり、329日現在で、感染者累計で66万人、死者385人、感染が確認された国と地域177を数え、文字通りパンデミック状況となっています。発生地の中国ではピークを超えたようですが、欧州そして米国ではいぜんとして感染が止まりません。イタリアやスペインでは医療体制が崩壊的な状態となり死者数が激増し、米国ではあっという間に感染者数が世界で最も多い地域となってしまいました(感染者:3153499329124686人 死者は今後10万〜20万人に上る可能性も)。

一方、日本でも感染者の増加傾向は止まらず、328日時点で感染者1680人、死者55人に上りました(クルーズ船などを除く)。懸念されるのは東京での感染状況であり、欧米のように都市封鎖に突き進むか否かの岐路となっています。

さらに深刻なのは、国連・グテーレス事務総長が述べているように、途上国、とりわけ医療体制のぜい弱な国そして7000万人に上る難民を抱えている地域です。例え欧米日で感染のピークが過ぎたとしても、これらぜい弱国・地域で感染が蔓延することが懸念され、そうなればブーメランのように(再び)先進国を襲うことになるでしょう。

●人類生存の危機、気候変動問題とともに

昨年12月上旬中国・重慶で発生してから今日までのパンデミック状況を見ると、ウイルス等感染症が限られた国や地域に留まらず、文字通り地球規模で厄災として降りかかり、人類を生存の危機に落とし込めるのだ、ということを改めて気付かされました。また、感染症の拡大が都市化とグローバリゼーション等の進展によりもたらされているとするならば、今後とも私たちは感染症によるパンデミックに逢着することは避けられません。39日付ウォール・ストリート・ジャーナルは次のように述べています。

「ここ四半世紀に、感染症の流行は世界中でありきたりの光景になってきた。専門家によると、都市化現象やグローバリゼーション、そして社会が豊かになるにつれて動物性タンパク質の摂取が増えるといったトレンドもその背景にある。専門家はまた、人々がさらに多くの感染流行に備える必要があると指摘している」(「発生頻度高まるウイルス流行、社会的変化で常態化も」)

人類を危機に陥れるグローバル・リスクには、「気候変動問題」に続き「感染症問題」もあるのだ、ということを私たちは認識しないとなりません。冒頭の2015年に行ったビル・ゲイツ氏の発言はまことに正鵠を得ていたと言えましょう。

●人類生存の危機的事態には地球利用代としての国際連帯税を

このようなグローバルな危機・脅威に対し、326日G20首脳は緊急のテレビ会議を開きました。首脳声明では、パンデミックを克服するために「必要なあらゆる手段を取る」と表明し、治療薬やワクチンの開発を促進することを確認したのですが、どうもG20首脳の危機意識は弱いようです。首脳声明は次のような書き出しではじまります。

「過去に例を見ない新型コロナウイルスのパンデミックは,我々の国際的な連結性と脆弱性を強く思い起こさせるものである」

一言でいえば、ウイルスがいくらでも人類を生存の危機におとしこめること等への危機意識がないということです。そのこともあり、資金につき「感染症対策強化に関する拠出を大幅に増加する」と述べながら具体的な数字を挙げていません(首脳会議のもうひとつの課題の「世界経済を守る」の方には5兆ドルという数字を出していますが)。

このままでは資金拠出もいつもの国際会議での決定に見られるように、「各国の努力目標」となってしまうでしょう。感染症問題が人類課題であるとするなら、そしてグローバリゼーションの進行によって避けられないとするならば、各国の国家予算からの拠出はもとより、グローバリゼーションの上に展開しそこから利益を得ている経済主体からも、いわば地球利用税(基金)のような資金を徴収してもよいのではないでしょうか。

実際、昨年まで日本の政治リーダーがそのことを国際社会に呼びかけていました。前外務大臣の河野太郎議員です。ここではSDGs達成のための資金につき語っていますが、同じ仕組みを感染症に対しても用いることができるでしょう。

「今,私が色々な会議で申し上げていることは,グローバリゼーションの光が当たっている場所から,その陰になってしまった場所に手を差し伸べる必要がある,きちんと資金を回す必要があるということです。私は国際連帯税と言っていますが,例えば莫大な為替取引に0.0001%くらいの国際連帯税を掛けさせてもらい,その税収を国際機関に直接入れ,その国際機関が緊急の人道支援を行うという提案をしており,多くの国から賛同を得ています」(201963日「慶應義塾大学における河野外務大臣特別講義『河野太郎,ODAを語る』」

今日深刻な新興ウイルス問題への対処ですぐには国際連帯税の議論は進められませんが、航空、金融、デジタル等グローバリゼーションの上で活動している経済主体に対して、地球利用代としての国際連帯税について真剣に考えなければならない時期・時代に来ていると思います。

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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2020年02月10日

新型ウイルス、医療体制の脆弱国家、国際連帯

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新型コロナウイルス肺炎の感染がたいへん懸念されますが、幸い毒性が低いので栄養と睡眠を十分取りウイルスに負けないようにしましょう。

ところで、新型ウイルス感染地図を見ると、驚くことにアジアの一部や中東(除くアラブ首長国連邦)・アフリカ、南米には1人も感染者がいません。いないのではなく医療体制が脆弱なため見つけることができないのだと思います。 

【日経新聞】コロナウイルス感染マップ

世界保健機関(WHO)は131日「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言し、とくに「我々はウイルスが医療態勢の脆弱な国に広がることを最も懸念している」と言明。

また、昨夜のNHKスペシャルでも、押谷・東北大学教授は日本国内での対策強化と共に「今後、アジアやアフリカの医療体制の脆弱な国々にこのウイルスが広がっていくとより大きな被害が起こる可能性もある。これらの国々をどう支援するのかという視点も必要だ」と述べました。

【NHK】感染はどこまで拡(ひろ)がるのか〜緊急報告 新型ウイルス肺炎〜

では、脆弱な国々への支援のための財源をどうするのか。このことにつき、昨日朝のTBSの『サンデーモーニング』で、寺島実郎氏は今こそ短期的な対策だけではなく中長期的視点に立ち日本が中国、韓国に呼びかけ感染症に対する共同研究体制を作れと提言し、そのための財源として国際連帯税を挙げていました。「今や5000万人も日本を出入りしている。これらの人にひとり1000円ほど払ってもらい財源とする」、と。航空券や乗船券への課税ですね。

さらに番組の後半で欧州10か国での金融取引税の動向も紹介し、「グローバリゼーションで恩恵を被っているものが(グローバルなリスクに対する)コストを負担すべきで、これが現代の政策科学ではないか」と述べました。

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)


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2020年02月03日

池田大作SGI会長、「教育のための国際連帯税」創設を提唱

いつも国際連帯税を支援してくださっている池田大作SGI会長が、このたび「教育のための国際連帯税」創設を提唱しましたので、ご紹介します。

第45回SGI提言G 「教育のための国際連帯税」を創設

「教育のための国際連帯税」を創設し、人道危機下の子どもたちを支援

(前略)

国連のSDGsで“すべての子どもたちに質の高い教育を”との目標が掲げられる中、紛争や災害の影響を受けた国で暮らす子どもたちが、「失われた世代」として置き去りになるようなことは、決してあってはならない。 

 (ユニセフ主導の)ECW(教育を後回しにはできない)基金が設立された2016年の時点での推計では、人道危機に見舞われた7500万人の子どもたちに基礎教育を提供するには毎年85億ドル、1人あたりで年間113ドルが必要になると見込まれていました。

 現在、その対象人数は1400万人に及び、必要額も増えているものの、世界全体の1年間の軍事費である18220億ドルのほんの一部に相当する資金を国際的な支援などで確保できれば、厳しい状況にある多くの子どもたちが、希望の人生を歩み出すきっかけを得られるのです。  

 その意味で私は、誰もが尊厳をもって安心して生きられる持続可能な地球社会を築くための挑戦の一環として、ECW基金の資金基盤の強化を図り、緊急時の教育支援を力強く進めていくことを呼び掛けたい。

かつて私は2009年の提言で、国連が当時進めていた「ミレニアム開発目標」の達成を後押しするために、国際連帯税などの革新的資金調達メカニズムの導入を促進することを提唱したことがあります。

SDGsの推進において、その必要性はさらに増しており、「教育のための国際連帯税」の創設をはじめ、資金基盤を強化するための方策を検討すべきではないでしょうか。

(中略)

私は、教育分野の支援において豊かな実績を持つ日本が、「教育のための国際連帯税」をはじめ、さまざまなプランを検討する議論をリードしながら、ECW基金の資金基盤を強化するための枠組みづくりで積極的な役割を担うことを強く呼び掛けたいのです。…以下、省略。

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)


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2020年01月23日

武漢市封鎖:新型肺炎、致死率3%超え>日本でのコストは観光客負担も

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新型コロナウイルス肺炎の感染拡大とどまらず、患者数も500人超となり、死者は17人に上るようになり、中国政府はついに発生地の武漢市を封じ込める体制に入ったようです(食料や飲料水など市民生活が心配ですね)。

当初この新型肺炎は感染力・毒性が弱いのでそう心配することはないと言われていましたが、どうやらウイルスが変異を遂げ、感染力・毒性を強めつつあるようです。実際、これまでの同じくコロナウイルスによって起きる感染症での致死率を見ますと、次のようになり、パンデミックとは言わないまでもその手前まで来ているようです。

MERS(中東呼吸器症候群)…35

SARS(重症急性呼吸器症候群)…10

・一般インフルエンザ…0.1

・今回の新型ウイルス肺炎…3.4%(22日現在:患者数500人、死者17人) 

さて、私たちにとって問題は、「かつては地域限定の風土病として収まったかもしれない感染症が飛行機に乗って世界に広がる時代」の中にあって、主に中国から大勢押し寄せる訪日観光旅行者です(春節には700万人が海外に出るとのこと)。まずは空港やクルーズ船の寄港地での検疫体制を強化することですが、全体の保健・医療体制を含め莫大なコストがかかることが予想されます。

このコストについてすべて国家予算で賄うのではなく、航空機(ならびに船舶)を利用し観光等を行っている旅行者に一部を負担していただくことが必要です。その仕組みが、航空券(乗船券)連帯税です。その税収の一部を新型肺炎症対策に使用することを求めていきたいと思います。

【日経新聞】新型肺炎、武漢市が交通機関を停止 死者は17人に

【朝日新聞】新型肺炎で識者「SARSより感染力・毒性弱そうだが」

★写真は武漢市のもよう(上記日経新聞より)

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

  

posted by resultsjp at 14:32| Comment(2) | 国際連帯税の推進

2020年01月21日

新型ウイルス肺炎の懸念>日本で拡大すると2.7兆円(GDP比0.5%)の損害が発生

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みなさま、グローバル連帯税フォーラムの田中徹二です。たいへん遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。


●新型コロナウイルス肺炎発生、「飛行機に乗って世界に広がる」

昨年末から中国の武漢で集団発生している新型コロナウイルスによる肺炎の患者は、現在武漢にとどまらず北京市と広東省深セン市にも拡大し、また国外では日本とタイ、韓国で患者が派生しました。当初、今回の新型肺炎は、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)と違って、ウイルスの人から人への感染は限られており、重症者の割合もさほど高くはない、つまり流行につながらないであろうと考えられていました。

しかし、ここに来て北京大の王月丹教授(免疫学)は「発症者が大幅に増えたことを受け『人から人に感染している可能性が非常に大きい』と指摘し」、さらに「感染が爆発的に広がる恐れがあると分析」120日付東京新聞)しています。

しかも、中国は春節(旧正月)で人の移動が激しくなっており、中国国内はもとより、「かつては地域限定の風土病として収まったかもしれない感染症が飛行機に乗って世界に広がる時代」(118日付毎日新聞)になっていますから、中国外に一気に拡大する懸念も大いにあります。実際、以前のSARS騒動は春節の後にもたらされました。

そこで心配なのは日本です。今夏には東京オリ・パラが開催されますが、期間中は世界中から、もちろん中国からも大勢の人が訪日します。その時「感染症がいっしょに持ち込まれる可能性は十分にある。逆に日本から海外に感染症を輸出してしまう恐れもある」(同上)よいうことも考えられます。


●もしオリ・パラ時に新興感染症が広がった場合、2.7兆円(GDP0.5%)の損害

さて、日本政府は20年の訪日客数を4000万人に増やす目標を掲げています(2019年は3188万人)。実は「内閣官房や厚生労働省などが、(我が国で新興感染症が広がった場合)03年に香港で感染拡大したSARSと、15年に韓国で36人の死者を出したMERSについて経済損失を分析」しています。その結果は、「訪日客が約1300万人減少。小売業などに影響して国内全体で27000億円(GDP0.5%)の損害が発生し、観光業を中心に58万人分の雇用が減ると推定」しています。


新型肺炎対策のための費用に航空券連帯税が必要

東京オリ・パラまであと半年余りで、それまでに新型肺炎が収束すればよいのですが、拡大していく可能性も無きにしも非ずです。すると中国との航空機を乗り入れている空港は検疫態勢を強化しなければなりませんし、医療体制も強化しなければなりません(すでに行っていますが)。いずれにせよ多大なコストがかかることになります。

このコストですが、もちろん政府支出になります。しかし、航空機利用者も一定の負担が求められるのではないでしょうか。私たちは短時間で遠くまで行ける利便性・効率性を国際航空網の発達で得ることができましたが、他方で感染症等の世界的な拡大という負の影響も及ぼしています(もうひとつの負の影響は二酸化炭素の大量排出)。その負の影響をカバーするための仕組みが、航空券連帯税など税制を通してコストを負担することです。

なお、国境を超える交通網はクルーズ船など船舶によるものがあり、中国からも大勢の訪日客がやってきます。こちらの方も乗船券連帯税が必要です。

こういう意味からしても、「国際連帯税創設を求める議員連盟」が求めている国際連帯税実現に向けた取り組みに注目していきましょう。私たちも全面的に支援していきたいと考えています。


《この間のメディアの報道》

【東京新聞】北京大教授、人から人の可能性大 新型肺炎、爆発的に広がる恐れ

【日本経済新聞】中国新型肺炎の死者3人に 北京や広東省でも発症確認

【毎日新聞】(社説)新型肺炎国内で確認 春節の大移動期に注意を

【毎日新聞】(土記)新型ウイルス、どう挑む?=青野由利

【毎日新聞】新興感染症 20年、国内で広がると…経済損失2.7兆円

★写真は、上記日経新聞より

posted by resultsjp at 11:45| Comment(1) | 国際連帯税の推進