2022年05月08日

ウクライナ難民と国際連帯税

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国際連帯税議員連盟でお世話になっている田島麻衣子参議院議員が、毎日新聞電子版の政治プレミアに「ウクライナ難民」問題について取材を受けていましたので、紹介します。


●日本政府は「避難民」受け入れと言っていますが、これは難民認定を極端に渋っている政府の政策によります。難民と避難民では、まるっきり保護待遇が違ってきます。その点をまず田島議員は指摘しています。

●なお、この問題については410TBS「サンデーモーニング」が分かりやすく解説していました(動画 )。


この難民問題は当然SDGs(持続可能な開発目標)の課題で、コロナ以前には貧困と保健関係の目標は相当改善されてきましたが、難民だけは2013年頃より急増し、2015年にはドイツがシリア難民等を100万人引き受けました。2020年で世界の難民数は8240万人にも上り、今日ウクライナから520万人の難民が生じていますので、全体で9000万人に上るのではないかと思われます(地球人口の約1.1%が故郷を追われている)。


●ところで、河野太郎元外務大臣(178月−199月)はSDGs対策のため国際連帯税の必要性を国際的に提案していましたが、その事例として当時急増する難民の救済を挙げていました。日本政府は、国際的支援を実施することはもとより国内的にも「故郷を追われた人は世界中にいる…日本が国際社会の中で応分の責任を果たすならば、これからもっと難民を受け入れなければならない」と田島議員は訴えています。


ウクライナ難民受け入れで豊かになる日本


田島麻衣子・参議院議員


 英オックスフォード大学院で難民問題や人道支援を学び、国連の世界食糧計画(WFP)でコンゴ民主共和国から隣国のアンゴラに逃れてきた難民たちのキャンプに入るなど支援の現場に関わった。日本はこれまで難民政策と言えるものがなかった。今回のウクライナ難民の受け入れによってまず一歩を踏み出さなければならない。 


 日本政府は、ウクライナからの「避難民」を受け入れたと言っているが国際的には通用しない。命を守るため、政治的な武力紛争から逃れ国境を越える人々は難民だ。岸田文雄首相が国際会議で「避難民」と発言した時にどう通訳するというのか。「難民ではなく、避難民だ」などと言えば、私が学んだ教授たちに怒られてしまう。 


 日本政府は難民制度を本質的に変えていく気がない。ウクライナ難民への対応も場当たり的で、長期的な視点がない。 


 Q:大量の難民が来たらどうするか 


 A:国連の現場にいると、人道支援がいかに難しいかということを、身をもって体験する。難民キャンプに支援に入るとしても、受け入れ国の許可がなければ入っていけない。助けようと思っている難民が受け入れ国の政府から迫害されている場合、どうすればいいのか。人道支援の原則である中立的な支援ができるのか。 


 そうした問題を抱えながら、それでも人道支援をしなければならないことを実地で学ぶ機会が、これまでの日本には欠けていた。(以下、省略)

※写真は毎日電子版に載った田島麻衣子議員

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)






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2022年04月20日

【ご案内】5.12コロナ時代のグローバルヘルスへの日本の取り組みに関する緊急集会

WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスの緊急事態宣言を出してから本年1月で2年目を迎えましたが、いぜんとしてパンデミックは収まりそうにありません。

WHOの活動予算は「先進国の中規模病院ほどの額」(テドロスWHO事務局長)

パンデミックが収まらない要因のひとつがグローバルヘルス(国際保健)への圧倒的資金不足です。感染症との戦いの中核を担うはずのWHOすら「予算は2223年の2カ年に61億ドル(約7千億円)と『先進国の中規模病院ほどの額』(テドロス氏)」という有様。しかも「加盟国による拠出金は全体の2割弱にすぎず、残りは民間の慈善団体などからの寄付に頼る」(130日付日経新聞)という状況【注】。

このこと一つとっても5億人を超えて今なお拡大し続ける感染症を克服できないことは明らかです。資金の抜本的拡充、パンデミックへの途上国支援を含む公正なルールを求めて超党派の国会議員とともに緊急集会を開催します。 

●基調講演は國井修さん:GHITファンドCEO

詳細は以下をご覧ください。前グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)戦略投資効果局長で現グローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)CEOの國井修さんが基調講演を行います。 

【注】WHO改革、資金不足が足かせ コロナ緊急事態2 


(ご案内)2022512日 午前10-11時(予定)

コロナ時代のグローバル・ヘルス(国際保健)への日本の取り組みに関する緊急院内集会 

◎日時:2022512日(木) 午前10時〜11時(予定)

◎会場:参議院議員会館1階102会議室(※オンラインでの中継を行います)

◎主催:緊急院内集会 実行委員会

※参加団体(50音順):アジア太平洋資料センター(PARC)、アフリカ日本協議会、グローバル連帯税フォー型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に!連絡会、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、日本リザルツ

◎定員:会場直接参加については、感染症対策上、15名とします。

    (※オンライン参加については、特段、定員は設けません)

◎申込:次のリンクからご登録ください。 http://ow.ly/3Ieo30sht1B 

◎問合せ:(特活)アフリカ日本協議会(担当:稲場・小泉)

電話:03-3834-6902Fax03-3834-6903  メール:ajf.globalhealth@gmail.com 

★新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)で、グローバルヘルス(国際保健)は新たな時代を迎えました。世界で、日本で、コロナはまだ終わっていません!

★パンデミックにより、グローバル・ヘルスは世界の安全保障上の重要課題となりました。また、富裕国と貧困国の「ワクチン・医薬品格差」が明らかになりました。格差を放置すれば、その悪影響が「変異株の蔓延」などの形で全世界に及ぶこともわかりました。 

★パンデミックにより、エイズ・結核・マラリア、母子保健などへの取り組みが後退しています。パンデミック下で保健の取組が成果を上げるには、より多くの費用がかかることもわかりました。 

★コロナの収束や新たなパンデミックへの備えに向けて、超党派にて、グローバル・ヘルスへの取り組みを強化し、資金を増やし、日本と世界で「いのちを大事にするしくみと文化」を育むため、院内集会を開催します。

★集会では、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)の戦略投資効果局長を務め、本年から日本のGHITファンドのCEOを務める國井修氏が基調講演を行います。

★本集会の開催にあたって、実行委員会に集まる市民社会は、コロナ時代のグローバルヘルスの重要性に鑑み、国際保健分野へのODAの増額や「国際連帯税」等の導入も含め、国際保健への資金を倍増すること、世界の医療アクセスの格差をなくし、途上国への技術移転の促進や緊急時の知的財産の共有をルール化して、世界全体で必要な医薬品を製造できるようにしていくこと、そのための世界のルール・メイキングに日本政府も積極的にかかわること、を求めます。

◎集会呼びかけ人(413日現在)

・自民党:衛藤征士郎衆議院議員、武見敬三参議院議員

・公明党:古屋範子衆議院議員

・立憲民主党:石橋通宏参議院議員、田島麻衣子参議院議員

・国民民主党:古川元久衆議院議員

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◎プログラム

・基調講演:國井修 GHITファンド最高経営責任者(元グローバルファンド戦略投資効果局長)

・国際保健に関わるNGO/NPOや政府からのコメント

・国会議員や参加者によるディスカッション等

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)

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2022年03月07日

毎日新聞『余録』で国際連帯税、「富の再分配と投機抑制」で世界の連帯を

37日付の毎日新聞の、朝刊一のコラム『余録』にトービン税や国際連帯税の記述がなされました。上村雄彦横浜市大教授のコメントも載っています【注】。


見逃された方も多いと思いますので、簡単にまとめます。

▲効果が見えやすい税のアイデアが生まれたのは、今から50年前の1972年だった。外国為替市場の取引に各国が共同で課税し、投機マネーの流入を抑えるものだ。…ノーベル賞を受賞した経済学者トービンが唱えた。

この案をベースにした「国際連帯税」構想がコロナ下で注目されている。株や為替などの取引に各国が課税し、税収を途上国支援に充てる。先進国の金融緩和でマネーゲームの様相が色濃くなった一方、途上国では貧困層の暮らしが悪化したためだ。

▲日本でも導入を求めて活動しているNGOがある。メンバーの横浜市立大教授、上村雄彦(うえむら・たけひこ)さん(56)は国連職員としてパキスタンの農村支援に携わった経験が忘れられない。(略)上村さんは「格差が広がる今こそ先進国は世界の富の再分配を主導すべきだ」と語る。

▲ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が急騰し、途上国には物価高ものしかかる。世界が連帯する必要性は一段と高まっている。


<原油価格急騰と投機マネー>

原油価格の急騰ですが、本日1バレル140ドル近くまで急伸し、「20087月以来、約138カ月ぶりの高値を付け」ました(37日付日経新聞電子版)。欧米がロシアからの原油輸入の禁止を検討しているのも一因ですが、実際のところ投機マネーが原油需給ひっ迫を最大限利用して原油先物市場にどんどん入り込んでいるのが一番の要因です。

かつて原油トレーダーでもあった豊島逸夫氏は、こう述べています。「市場が恐れていた事態が起こりつつある。百戦錬磨であるニューヨーク市場参加者の顔が昨晩は青ざめた。原油先物価格が1日で11%も暴騰し、もはや投機マネーの空中戦と化している」(32日付日経新聞電子版「核とスタグフレーション懸念の共振」豊島逸夫)。市場参加者が青ざめた31日のWTIでの原油先物価格は約109ドル。もはや原油先物市場は(小麦を含む他の国際商品も)ウクライナ危機を奇貨として投機筋のマネーゲームの修羅場(というより鉄火場)となっているのです。

マネーゲームを抑制するには、トービン税はじめさまざまな規制が必要となっています。他方そうした税制が実現されればばく大な税収をもたらします。これをコロナ・ワクチンほかの国際公共財のための資金調達として途上国支援を行うことができます。

【注】

毎日新聞『余禄』(3月7日)

https://mainichi.jp/articles/20220307/ddm/001/070/145000c


(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)


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2022年02月16日

「斎藤幸平&上村雄彦対談」:イベントの様子をYouTubeに公開!

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遅れましたが、128日に開催された「斎藤幸平&上村雄彦対談/『人新世』を生き延びるために何ができるのか〜新しい資本主義とグローバルタックス〜」のイベントの様子をYouTubeにアップロードしました。以下のリンクからご覧いただけます。ダイジェスト版は作成中です。

*斎藤幸平&上村雄彦対談 ⇒ こちらからご覧ください

お時間のない方は、国会議員のみなさんと議論をしている箇所(4325秒あたり)からご覧いただくと、課題点がわかるのではないかと思います。動画を視聴いただいた方は、感想をお寄せいただけますと幸甚です。


上村雄彦教授の当日のパワーポイント資料は、下記のグローバル連帯税フォーラムのwebサイトに掲載されています。

*上村先生のパワーポイント資料 @)A)B)⇒ こちらからご覧ください

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)




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2022年02月13日

岸田首相の経済ブレイン・原丈人氏が金融取引税について提言

岸田文雄首相が打ち出している「新しい資本主義」などの経済政策の作成において、首相のブレインを務めているのが「公益資本主義」論を執筆したことで有名な原丈人氏(アライアンス・フォーラム財団代表理事、元内閣府参与)です。ブルームバーグのインタビューの中で、原氏が「金融取引税」について実施すべきと提案していましたので、内容を取りまとめたものを紹介させていただきます【注1】。


まず原氏は、以下の4項目について述べています。


1)四半期開示の見直し


⇒短期経営になればなるほど投機的な傾向が強まり、ヘッジファンド等の餌食となる


2)自社株買い


⇒自社株買いは資本主義の大原則に反して、株主と経営者が受益者となっている


3)金融取引への課税


⇒有価証券取引税が復活した


4)公益資本主義


⇒これまでの英米流の株主資本主義からの転換、ダボス会議でステークホルダー資本主義が提唱されるようになった


さて、3)金融取引への課税についてですが、原氏は「東京証券取引所でのHFT=高頻度取引のようなものは、本来金融市場にとって良いのか。スーパーコンピューターを使っている人たちと普通の人たちの株取引がフェアでなければならないという視点から見ると、枠組みを変える必要がある」と述べています。金融取引への課税は金融規制ならびに税収増というふたつの面があると思いますが、原氏は主にHFTなど投機マネーの規制を念頭にいれて提案されているようです。


原氏はこれまで、課税の使途=税財政にまで踏み込んだ発言はしていないようですが、金融取引税が社会保障などの税収増につながるなどの言及がされれば、非常に重要な提案になると考えています。


実際、欧州は8000億ユーロ(約100兆円)に上るコロナ復興基金の財源のひとつとして金融取引税を充てようとしています。日本でも莫大なコロナ対策資金を赤字国債で発行していますので、今後、金融取引税が財政立て直しの重要な財源になると思われます。原氏が指摘している投機マネーの元になっている外国為替(通貨)取引に課税できれば、国際連帯税の実現にもつながります。


岸田首相の経済ブレインが金融取引税について言及をしていることは、今後の政治展開に一定の希望を持つことができます。


(追記)原氏は別のメディアで「小泉政権時代に構造改革が唱えられ、成長戦略がもてはやされて民営化も進みました。しかし、国民の所得は増えませんでした。増えたのは、配当と自社株買いによる株主還元だけです」【注2】と述べ、「岸田首相には方針を変えるべきです。国民が豊かにならなければ、市場が重要であるとする主張に意味はないでしょう」と伝えたと述べていました。 インタビュアーは「(16年に公益資本主義が国会でも話題になったが脚光を浴びなかった。しかし)長引くコロナ禍により日本経済が打撃を受ける中、原氏の持論は政策を左右するほどになっている」と結んでいます。


【注1


分配の次は財政出動強化、首相に助言の原氏が分析−新しい資本主義


四半期開示が企業の成長阻害、自社株買い規制の議論を−原氏一問一答


【注2】 


岸田版・新しい資本主義の元ネタ?「公益資本主義」提唱者が語る“分配の理想形” 

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本:公益資本主義.JPG

(報告:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム/日本リザルツ理事)
posted by resultsjp at 18:54| Comment(1) | 国際連帯税の推進