本日(3月25日)の読売新聞朝刊に「抗菌薬 脱中国依存へ 原薬確保 30年ぶり国産化政府支援」と大見出しで、国内の製薬企業が約30年ぶりに抗菌薬の原薬製造に向けた準備を進めているとの報道がなされました。
抗菌薬は、感染症の治療、手術時の感染予防に活用されるなど、現代の医療において重要な役割を果たしており、その安定供給確保は、極めて重要です。抗菌薬に限らず医療現場で広く使用されてきた医薬品が、製造上のトラブルや輸出禁止措置など様々な原因で、原薬や中間体の製造・輸入が行われず、供給が停止されることで、医療に支障を来たすおそれが生じます。
こうした観点から、厚生労働省は安定確保について特に配慮が必要とされる医薬品(以下「安定確保医薬品」という。) を選定しました。さらに2022年には政府として、経済安全保障の観点からも特定重要物資の安定供給確保の対応が必要ということで、抗菌薬(抗菌性物質製剤)がその対象として、財政的支援が開始されました。その流れを受けて、一部製薬企業が原薬製造に復帰したというわけです。
記事で指摘されていますが、抗菌薬の供給体制が不安定化した一因は、抗菌薬の開発、生産には相応のコストが掛かるのに対し、薬価が下落することでコストとの兼ね合いで収益性が厳しくなることが挙げられています。一部品目については薬価を引き上げるなどして製薬企業が安定的に収益を確保できるよう、持続可能にする仕組みづくりが必要との専門家のコメントが引用されています。
一方、抗菌薬は、経済的な供給面の問題の他に、薬剤耐性(AMR)を持った菌が次から次へと発生する問題があります。「細菌に使用する抗微生物薬を抗菌薬(抗生物質と呼ばれることもあります)といいます。抗菌薬が使用されると、抗菌薬の効く菌はいなくなり、AMRをもった細菌が生き残ります。その後、AMRをもった細菌は体内で増殖し、ヒトや動物、環境を通じて世間に広がります。抗菌薬の不適切な使用はこれを助長します。風邪など抗菌薬が効かない感染症には使用せず、本当に必要なときに限って使うことが大切です。」(出所:AMR臨床リファレンスセンターウェブサイト、https://amrcrc.ncgm.go.jp/020/010/index.html)
新聞記事でも大曲貴夫国立国際医療研究センター・国際感染症センター長の言葉が紹介されています。「貴重な抗菌薬を長く使い続けられるように、風邪のときは抗菌薬を服用しないなど、適切な使用を心がけることも大事だ」。
大曲先生には、以前(2020年3月)にも、コロナ対策で多忙を極める中、日本リザルツのサンキューセミナーに講師として、AMR問題についてレクチャーしていただいたことがあります。
先生がその時も強調されていたのは、日本は、薬剤耐性・抗菌薬に関する正確な知識の保有比率が欧米各国に比較し低い(風邪にも抗菌薬が利くと考えがち)、AMR対策のポイントは抗菌薬の適正使用(風邪でむやみに抗菌薬を使わない)、国際的な協力が必要(AMRに国境はない)ことなどでした。そして、ご自分の責務としてこれらのAMR対策をやり遂げなければならない、と熱く語っておられました。
医薬品は、健康を守るための大切な武器なだけに、供給体制や使い方、いろいろな角度からの配慮が必要だ、ということが痛感させられます。
(のーびっひ)
