3月15日に世界銀行 東京開発ラーニングセンター(TDLC)と広島市の共催で開かれた国際シンポジウム「復興から成長へ 広島の経験に学ぶ」に日本リザルツの白須理事長をはじめ、スタッフや日本リザルツと親交のある皆さんで参加させていただきました。会合の様子は、地元の中国新聞をはじめとする多くのメディアで取り上げられています。
冒頭、地元広島選出の岸田総理大臣からビデオメッセージが寄せられました。岸田総理はG7広島サミットに向けて日本が55億ドルの支援を世界銀行を通じて行うことを説明した上で、「私は、力による一方的な現状変更の試みを断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く強い意志と、核のない世界の実現を目指すメッセージを、唯一の戦争被爆国として力強く世界に発信し続けたいと思います。そして、同志国と共に、ウクライナの1日も早い復興に向けた取組を、日本の知見をいかして支援していきたいと思います」と力強く訴えられました。
岸田内閣総理大臣ビデオメッセージ(首相官邸):
また、世界銀行のデイビッド・マルパス総裁もビデオメッセージを寄せられ、ロシアによるウクライナ侵攻等により、世界各地で脆弱性が高まっていることを指摘し、すでに世界銀行によるウクライナ支援は205億ドル(約2.8兆円)に達し、このうち190億ドル(約2.6兆円)は実行済であることが紹介されました。その上で、「平和・繁栄に向けた取り組みを進めるに当たり、ウクライナ自身が復興に向けた準備を始めることは極めて重要です。甚大な被害の中から立ち直った歴史を有する広島こそ、本日の議論を行うのに相応しい場所はないものと考えます」と広島でシンポジウムが開催されることの意義を述べられました。
マルパス総裁のメッセージ:
今回のシンポジウムには、スタッフの園田と杉原も参加しました。以下2人の感想を述べさせていただきます。
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以下、杉原記載:
私がこの会議に参加して最も心を掴まれた瞬間は、「映像と音楽で振り返る広島の復興」というコーナーでした。
このコーナーは、松井一實広島市長をモデレーターとし、原爆投下直後や広島の町並みの映像を背に、広島ウィンドオーケストラの生演奏とともに、広島の過去から現在までを振り返っていくというものでした。
最後に、今回のために結成された「平和を運ぶ合唱団」によるカンタータ「土の歌」の第7楽章である「大地讃頌」の合唱が演奏されました。これを聞いたとき、会場全体の一体感を感じ、国や言語は違えど、音楽を通して平和というものの尊さ、美しさ、人間の心の温かさを感じました。
これまで私は、平和のために何か行動しなければと思ったとき、対話や議論ばかりを重視し、言葉や論理に拘りすぎていた自分がいました。今回の経験を通して、平和を希求する手段は必ずしも言葉である必要はないと実感しました。言葉でしか語りえない平和もあり、音楽にしか語りえない平和もあるのだと思います。
「大地讃頌」の歌詞の中に、「母なる大地の懐に 我ら人の子の喜びはある」というフレーズがあります。
人智を戦争や核兵器という愚かな手段に利用してしまった人間であろうと等しく土に還るのだから、生命の誕生の源である大地の恵みをうけ、「我ら人の子」は立ち上がることができるし、喜びを分かち合うことができる。
作詞者である広島生まれの詩人、大木惇夫さんは、こうした想いを音楽にのせて謳っていくことにしたのではないかと思います。
平和を希求する心を人が持ち続ける限り、それはどういった形であれ他者の心を打つ形となって現れてくるのだと、今回のシンポジウムと広島の人々の姿を見て感じました。
また、松井広島市長はお話の中で、平和とは、家族や友人、大切な人との時間を当たり前に過ごすことができる「ポジティブ」な状態だとおっしゃっていました。松井市長は初の被ばく2世市長です。広島平和記念式典で読み上げる宣言に、戦後初となる被ばく者の体験談手記を引用するなど、被ばく者の心に寄り添った対応をされてきました。戦争当時、広島で被ばくした方々の恐怖や絶望は計り知れません。彼らにしか語ることのできない原爆、核兵器の恐ろしさがあるだろうし、彼らにしか語れない平和への思いはあると思います。
戦争を経験していない私が簡単に言うことではありませんが、松井市長の言葉や広島の方々の姿から、いかなる状況にあっても、そのポジティブな状態に向かって一人一人が少しでも希望を持ち続けることに平和があるだと思います。また、平和は、国家や機関、団体によってつくられていくものではなく、個人から生まれていくものだと感じています。だからこそ、自分が大切な人と過ごせる時間がいかにかけがえのないポジティブなものであるのか、足元にある平和を噛み締めて今日一日を大切に生きなければならないと、一個人として思います。
現在もなお続くウクライナ戦争の渦中で苦しみ続けている人の絶望も本当に計り知れません。ポジティブな日常が奪われ続けているウクライナの人々の計り知れない苦しみに、一人の人間としてどれだけ寄り添うことができるのか、絶えず思いを馳せて考えていくことの大切さを感じました。
過去の戦争の歴史や現在の状況を見ていて、人間そのものの醜さ、愚かさや、結局は自分に何もできないということに絶望を感じてしまうこともありますが、それでも自分自身は、まっすぐに平和を希求できる一人の人間であり続けたいとただただ思いました。そのために、当たり前ではありますが、もっと沢山勉強して、もっと沢山の人から誠実に謙虚に学んでいき、その上で世界の現状に目を瞠り続けていきたいです。
杉原怜奈
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以下、園田記載:
今回の会合には、ウクライナからアナユルチェンコ地域社会・領土・インフラ開発省副大臣と、ミコライフ市のオレクサンドル・シンケヴィチ市長が参加されており、私はたまたま近くの席に座らせていただいていました。お二方のスピーチに共通していたのは、今の事態を少しでも良い状況にしたいという言葉の一つ一つが明らかに重みを持つものだったことです。
アナユルチェンコ副大臣の基調講演
住居や生活インフラなど、約1000億ドルに及ぶ甚大な損害を受けても、復興に向けて「より良い社会構築を目指す」という力強いメッセージからは、副大臣として国民の皆さんを支えているという責任感が伝わってきました。
第3部のパネルディスカッション 左から3番目がミコライフ市オレクサンドル市長
危機の時だからこそ市民との対話、市民の声に耳を傾けることを続ける大切さ、命を守るためにできることがたくさんあるというメッセージからは逆境に負けない強さを感じました。
彼らと同じ会合に参加してはいるが、私とお二方には、大きな隔たりがあるということにハッとさせられました。例えば、彼らは会合後、戦争下にある自国に帰り、国民の命を守るために働きます。私は会合後に広島で観光を楽しんでいました。ウクライナ侵攻が起きた1年前の2月、戦争が日本で起きてもおかしくないと、自分自身に警鐘を鳴らしていたつもりでしたが、心の奥底では、対岸の火事だと思ってしまっていました。そこに、人の痛みを自分ごととして捉えることの必要性と、その難しさを、強く感じました。
ミコライフ市オレクサンドル市長とお写真を撮影しました
いつでも連絡してね!と名刺も頂戴しました。
アナユルチェンコ副大臣とも記念撮影させていただきました。
スピーチの後、感動のあまりすぐに駆け寄り、写真を撮らせていただきました。
NGOの仕事でも、同じことが当てはまります。困っている人の心を自分事として理解できなければ、その人たちの立場に立った必要な支援はできないということです。日本リザルツのインド進出にあたり、私が人の痛みを自分ごととして感じられるようになるまで、すでに何度も壁にぶつかっています。一方でこれは悩む価値の高いことだとも思います。
今回の世界銀行の会合や広島出張を通じ、平和を願う素晴らしい演奏や、豪華パネリストによるスピーチ、原爆ドームへの訪問など、平和について考える貴重な経験をさせていただきました。
パネリストの集合写真(写真の右端が緒方副財務官)
財務省からは、緒方健太郎副財務官が参加され、鈴木俊一財務大臣のメッセージを代読していました。
まだまだ浅慮ではありますが、平和をいくら論じるよりも、困っている人の心を1ミリでも多く理解できるように自分を変革させることが今必要だと痛感しました。マハトマ・ガンジーの言葉に、「変革を望むならば、まず自らを変革せよ」とあります。大きな変化を起こすために、まずは自分の心を絶えず変革させることを肝に銘じたいと思います。
原爆ドームの写真
広島平和記念公園の写真

このような貴重な機会を与えていただいた白須理事長、世界銀行の米山泰揚駐日特別代表のご厚意に心からの感謝を申し上げます。
園田開
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シンポジウムの詳細はこちらを参照:
国際シンポジウム「復興から成長へ 広島の経験に学ぶ〜広島とウクライナ・東欧諸国・中央アジア諸国の対話〜」の概要
posted by resultsjp at 06:54|
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